研究課題
真核生物の膜系小器官は、小胞の出芽・融合を繰り返しながら絶えず変化している。そのため、膜系の変化に随時応じて、その膜系のアイデンティティーを示す分子が膜系表面に提示されることが必要である。その役割を担う分子が、真核生物で60種類以上も存在する低分子量GTPaseであるRabファミリータンパク質である。Rabは自身のC末端に付加された脂質基を細胞膜に挿入することによって膜表面に局在する。細胞質中では、露出した脂質基はタンパク質の凝集を招くため、RabGDIタンパク質がRabの脂質基を覆うように結合して安定に存在している。そこで、各膜系に応じて必要なRabを、細胞質中の対応するRab-RabGDI複合体から解離させて膜に埋め込むことが必要になる。膜タンパク質であるYipファミリータンパク質がその機能を担うと提唱されてきたが、実際の反応機構は未知であった。そこで本研究では、YipがRabを膜系表面に挿入する機構の解明を目指した。まず、Yipタンパク質を調製し、Yipを高濃度で含むリポソームを合成するための条件検討を行った。試験管内におけるYipの脂質膜への取り込み効率は非常に悪かったが、脂質の種類や割合の検討を経て高濃度でYipを含むリポソームを合成することに成功した。更に、C末端に脂質基を付加したRabとRabGDIの複合体を、昆虫細胞を用いて高効率で調製する方法も確立した。また、本研究遂行期間中に、各Rabに対応するRabグアニンヌクレオチド交換因子(RabGEF)が、Rabの活性化と膜挿入を同時に行う機能を持つという研究が複数発表された。そこで、数種類のRab-RabGEF複合体の調製を試み、発現システムやコンストラクト等の改良を経て安定に調製することに成功した。今後は引き続き、これらの因子を用いてRabが細胞膜に挿入される機構の解明を目指す。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件)
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