研究課題
E4遺伝子が欠損した変異アデノウィルスの増幅には、増幅に用いる細胞内でのE4遺伝子の発現が必須となる。H25年度に明らかになった問題は、E4遺伝子が細胞に致死的なため、FlpIn-TRexシステム(インビトロジェン社)等の比較的遺伝子の漏れ出しが少ないとされる系を用いてE4遺伝子を誘導可能な安定株を作成しても、誘導無しで発現するE4遺伝子の量が想定以上に多く、安定株作成中に細胞が死滅してしまったことであった。そこで、一過的にE4遺伝子を大量に発現できる系が必須であると考え、H26年度はE4遺伝子の上流にCMVプロモーターを持つように設計された挿入遺伝子を持つバキュロウィルスの構築を行なった。この手法によれば、バキュロウィルスの増幅に用いるSf9細胞ではE4遺伝子の発現は起こらないが、このウィルスが哺乳類細胞へ感染した時のみCMVプロモーターが働き、E4遺伝子が発現するはずである。そこでまずGFP遺伝子をAdEasy-2へ導入し、変異ウィルスの生成や増幅が確実に行われるかの検証を行った。実際には、(1)AdEasy-2遺伝子を細胞にトランスフェクション後に変異バキュロウィルスを感染させるタイミングや感染量の検討、(2)作成されたP1ウィルスを細胞に感染後に変異バキュロウィルスを感染させるタイミングや感染量の検討、の2点の検討を重点的に行った。その結果、本システムが問題なく作動することが確認できた。これは特筆すべき成果である。現在は、この変異アデノウィルスを大量増幅する条件の検討とともに、GFPより更にハードルの高いSERCA1a遺伝子を発現するウィルスの構築に取り組んでいる。また、本年度中にIP3受容体の発現系の構築にも取り組む。
2: おおむね順調に進展している
E4遺伝子の上流にCMVプロモーターを持つように設計された挿入遺伝子を持つバキュロウィルスの構築には想定以上に時間がかかったが、無事に構築することができた。現在は安定供給が可能である。最終年度に最終目標であるIP3受容体の発現系の構築にとりかかれることからも、計画は順調に進展していると言えよう。
本年度の最大の成果である、AdEasy-2システムを用いて構築したGFPを発現するウィルスを用い、変異アデノウィルスを大量増幅する条件の検討を行う。条件が定まったら、大量発現を行ってみる。また、同系を用いて、SERCA1aそしてIP3受容体の発現系の構築に取り組む。発現に成功したならば、精製を行い、活性等を調べる。
本研究で一番経費のかかる部分は、①アデノウィルスの大量精製と・膜蛋白質の大量発現・精製、②Sf9/バキュロウィルス系による発現、の2点である。これらに本格的にはまだ取り組んでいないためである。
①アデノウィルスの大量精製と・膜蛋白質の大量発現・精製、②Sf9/バキュロウィルス系による発現を大量に行うので、これに用いる予定である。
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J. Biol. Chem.
巻: 290 ページ: 4829-4842
10.1074/jbc.M114.611384