研究課題
E4遺伝子が欠損した変異アデノウィルスの増幅には、E4遺伝子を何らかの形で細胞内で発現することが必須となる。だが、E4遺伝子が細胞に致死的なこともあり、通常の安定発現株等の樹立は困難であった。また、遺伝子の漏れ出しが少ないとされる発現誘導が可能な鑑定株の作成も試みたが、誘導無しで発現するE4遺伝子の量が想定以上に多く、失敗に終わった。そこで、一過的にE4遺伝子を大量に発現できる系の構築を行った。この系を用いて、GFP遺伝子を発現する変異アデノウィルスの作成には成功した。開発した系は、培養細胞に変異アデノウィルスとE4遺伝子とを同時に導入する必要があり、両者の導入のタイミングや、ウィルス量の検討等、解決すべき困難な問題も多かったが、現在では一応のプロトコルが定まった。そこで現在この系を用いて、IP3受容体が発現するかどうかの実証を行っている最中である。だが、現時点でもE4遺伝子の細胞致死性は看過できず、これが変異ウィルスの力価を弱くしていることは自明である。そこで、平成28年度ではこの問題の解決を図る予定である。一方、研究当初にはそもそも存在しなかったが、近年着目を集めている、哺乳類培養細胞に感染し、目的遺伝子を発現可能なバキュロウィルス発現系も立ち上がった。そこで、このバキュロウィルスを用いて、IP3受容体を発現する系の構築も目指しており、現在ウィルスを調整中の段階である。開発した変異アデノウィルス発現系との比較のためにも、両手法の比較は重要である。
3: やや遅れている
E4遺伝子を一過的に発現する系の構築に当初の想定よりも時間がかかったが、一応のプロトコルも定まった。だが、E4遺伝子が想像以上に細胞に致死的であり、それがウィルスの力価を弱くしていることは明白であり、この解決を行う必要がある。一方、研究当初にはそもそも存在しなかった哺乳類培養細胞に感染可能なバキュロウィルス発現系も立ち上がり、このバキュロウィルスを用いた発現も追求する必要が生じた。そのため当初の研究計画よりは遅れているが、平成28年度の研究により、本研究を修了できると考えている。
変異アデノウィルスを作成する際、細胞致死性のあるE4遺伝子を発現する最適のタイミングを見積もり、高い力価の変異ウィルスの作成を目指す。それとともに、本発現系でIP3受容体の発現を目指す。一方、研究当初にはそもそも存在しなかったが、近年着目を集めている、哺乳類培養細胞に感染し、目的遺伝子を発現可能なバキュロウィルス発現系を立ち上げた。そこで、このバキュロウィルスを用いて、IP3受容体を発現する系の構築も目指す。開発した変異アデノウィルス発現系との比較のためにも、両手法から得られた蛋白の比較を行う予定である。
平成27年度までの研究で、新規アデノウィルス発現系の構築にほぼ成功した。一方、研究開始当初には存在しなかったが、近年、哺乳類培養細胞に感染し、目的遺伝子を発現可能なバキュロウィルスの利用も可能となった。開発した変異アデノウィルス発現系との比較のためにも、上記バキュロウィルスでの超巨大分子の発現が必須であると考えている。これらの実験の実施のためにも1年間の補助事業期間の延長が必要であるため。
実験実施に必要な物品の購入や、旅費、並びに人件費等に使用する予定である。
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