研究課題
挑戦的萌芽研究
Protein kinase C(PKC)は、連続した2つのC1ドメインであるC1AおよびC1B ドメイン(DAG結合ドメイン)と、C2ドメイン(Ca2+、IP3結合ドメイン)、キナーゼドメインからなる。PKCの機能や活性化を理解するためには、全長のタンパク質を用いて、各ドメインが本来の相互作用をしている自己阻害状態の構造的知見が、まず必要である。さらにセカンドメッセンジャー等により活性型となり、膜と相互作用した活性化型の構造も重要である。従来、PKCaのC1Aドメインは、大腸菌の発現系では可溶化せず、大量調製が困難であった。申請者は、C1Aのシステイン残基と疎水性残基の二重変異体を作製することで大腸菌からのC1Aドメインの大量調製が可能な系を構築した。これを用いて同位体標識を行って、現在までにNMR信号の帰属と立体構造を決定した。また調製したC1ドメインとC2ドメインをライゲーションするための予備実験を行った。連結によく利用されるsortase で、収量は極めて低いもののライゲーション産物を得ることが出来た。またキナーゼドメインの調製のため、カイコ個体を用いた発現系を導入し、安価で高効率なキナーゼドメインの発現・調製に成功した。
2: おおむね順調に進展している
(1)大量調製が困難であったPKCaのC1Aドメインは、C1Aのシステイン残基と疎水性残基の二重変異体を作製することで大腸菌からのC1Aドメインの大量調製が可能な系を構築した。これを用いて同位体標識を行って、現在までにNMR信号の帰属と立体構造を決定した。(2)sortase を用いて、C1ドメインとC2ドメインをライゲーションするための予備実験を行った。収量は極めて低いもののライゲーション産物を得ることが出来た。(3キナーゼドメインの調製は一般に高等な生物の発現系が必要なことから、細胞培養ではコストがかかる。そこで飼育の安価なカイコ個体を用いた発現系を導入し、安価かつ高効率なキナーゼドメインの試料調製に成功した。(1)-(3)のような進展があることから、おおむね、順調に推移しているといえる。
全長のタンパク質を再構成する際、ドメインごとに安定同位体標識やスピンラベルを行うことで、曖昧さのない帰属が可能である。従来のNMR測定法では、分子量等の問題により解析が困難であるので、タンパク質の重水素化とメチルTROSYを用いて先鋭化させたNMR信号をプローブに、スピンラベルからのPREを観測することで、立体構造情報を取得する。構造計算ではドメイン単体の構造をrigid bodyとして扱う。またSAXSを併用することで、SAXSからもドメイン間の相対配置に関する情報を取得する。これらの情報を統合して、自己阻害型のPKCの立体構造と、PKCの足場としてナノディスクにセカンドメッセンジャーを埋め込んだものを用いて、活性型の構造(ドメイン配置)を同様に決定する。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (5件) 図書 (1件)
Structure
巻: 22 ページ: 35-46
10.1016/j.str.2013.10.007.
Biochim Biophys Acta.
巻: 1834 ページ: 499-507
10.1016/j.bbapap.2012.10.013.
J Am Chem Soc.
巻: 135 ページ: 1688-1691
10.1021/ja310928u.
Plant Physiol.
巻: 162 ページ: 977-990
10.1104/pp.113.217455.
Biochem Biophys Res Commun
巻: 437 ページ: 12-17
10.1016/j.bbrc.2013.06.008.
Biochem Biophys Res Commun.
巻: 438 ページ: 653-659
doi: 10.1016/j.bbrc.2013.07.127.