従来、PKCalphaのC1Aドメインは、大腸菌の発現系では可溶化できず、大量調製が困難であったため、その立体構造の報告がない。申請者は、C1Aのシステイン残基と疎水性残基の二重変異体を作製することで、大腸菌からのC1Aドメインの大量調製が可能な系を構築し、NMRを用いてC1Aの立体構造を決定した。またC1B、C2ドメインの調製、C1B-C2タンデムの領域のNMRの測定、信号の帰属にも成功した。キナーゼドメインはカイコ個体、Sf9培養細胞を用いた調製を試みたが、構造解析レベルでの大量調製は困難であった。一方、PKCthetaでは、C1A、C1B、C2-like、キナーゼドメインのすべてについて、大腸菌の発現系を用いた調製に成功した。またPKCthetaのC2-like-C1AドメインとC1Bドメイン、C1Bドメインとkinaseドメインのライゲーションに成功した。これは全長の再構成、構造解析につながる成果である。ライゲーションにはSortase を用いたが、活性の高い変異型を用いると、低温条件でも十分、ライゲーションが可能であり、安定性の高くない試料にもSorataseによるライゲーションの適用の可能性を広げることができた。
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