膜コンタクト部位と呼ばれる、2つの異なったオルガネラの膜が非常に接近することで物質の効率的な小胞非依存的輸送を行なう特殊な膜ドメインが存在すると提唱されているが、その実体は未だほとんど不明である。当応募課題の研究目的は、この膜コンタクト部位を可視化することでその実体を明らかにすることである。そのため「2つの異なったオルガネラ膜が物理的に近接する部位が機能的膜コンタクト部位である」という独自の仮説に立脚し、物理的な近接性を検出・可視化する方法の確立を試みた。まず、オルガネラ間に物理的に近接した部位が存在し検定することが可能かどうか検定するために、Proximity Ligation Assay(PLA)を用いて固定細胞における膜近接部位を検出したところ、ゴルジ装置、ペルオキシソーム、ミトコンドリアと小胞体の膜間で近接部位が存在することが確認できた。現在、この検出法の妥当性を、電子顕微鏡解析や膜コンタクト部位の構築に必要であると考えられている遺伝子の破壊と組み合わせて証明を進めている。次に、この近接部位を生細胞で可視化するために、申請書で提唱した2種類のsplit-proteinシステムの作製を試みたが、① split-GFPでは会合状態から蛍光性タンパク質状態に成熟するのに数十分のタイムラグを生じるという問題、② split-luciferaseではタイムラグは無いが感度に低くリアルタイムの検出に問題があることが判明した。そこで新たにsplit-DHFRのシステムを採用した。このシステムとラパマイシン-FKBP-FRBシステムを組み合わせることで、ラパマイシン添加により、生細胞において膜コンタクト部位の検出に成功した。現在、感度など改良を加えることでラパマイシン非添加時でも膜コンタクト部位を検出できるように工夫を行っている。
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