研究課題/領域番号 |
25650036
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
松永 隼人 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (20437833)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | DAMPs / 生理活性物質 / 受容体 / 核シャトル / 脳・神経 |
研究概要 |
本研究は、ストレス誘発性に核から細胞外に遊離する脳保護性のプロサイモシンα(ProTα)の作用機構解明を目的とした研究である。その特徴として、遊離する神経細胞をホスト細胞と位置づけ、レシピエント細胞への作用機構に受容体シグナリングと核内への再取り込み:核シャトル機構が存在するという点にある。本研究では、「核シャトルしたProTαは、レシピエント細胞の表現型をシンクロさせる力の因子」であると仮説を立て、その検証を行う。 1.核シャトル可能な標識ProTαの生産:個体レベルでも安定して核シャトルが観察できる標識ProTαの生産を行った。GST-TEVプロテアーゼ認識配列融合ProTαを作製し、TEVプロテアーゼによりGST-tagの除去を行った後にクロマトグラフを行い高純度のProTαを多量に精製する系を構築した。本精製ProTαリコンビナントは、N末端のメチオニンが存在せず、2番目のアミノ酸であるセリンがアセチル化されており、生体内に存在するProTαと同等の配列であることに特徴がある。 2.ProTα核シャトルレシピエント細胞の特定と受容体シグナリング解析:脳神経系細胞の解析から、核シャトルレシピエント細胞としてアストロサイトが存在することを明らかとした。神経細胞、ミクログリアには受容体シグナリングを介して作用することを明らかとし、ミクログリアにおける標的ーシグナルが自然免疫受容体ーインターフェロン系であることを明らかとした。加えて、神経細胞における新規ProTα受容体を見出しており、同定を行う段階にある。 ProTαの核シャトルレシピエント細胞を同定し、受容体シグナルの系についても明らかにしつつある。平成26年度は、ProTαの細胞表現型制御としてレシピエント細胞核内におけるエピゲノム性制御とそれに付随した神経栄養因子群の発現機構の基盤解明を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.核シャトル観察可能なProTαリコンビナントの生産に成功しているが、核シャトル後のエピゲノム解析を含めた遺伝子発現解析を行うには、多量の高純度ProTαの作製が不可欠であった。現在、多量生産中である。 2.脳・神経系細胞の中で、核シャトルレシピエント細胞の存在を確認する必要があった。アストロサイトが当該細胞であることを見出した。 3.神経細胞、ミクログリアの受容体シグナリングが神経保護の主要径路であること、核シャトル機構との差別化を行う必要性から「核シャトル機構」よりも優先的に「受容体シグナリング」を解析する必要があった。
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今後の研究の推進方策 |
核シャトル可能なProTαリコンビナントの作製と核シャトルレシピエント細胞を特定できたことから、細胞表現型を制御するエピゲノム性遺伝子発現制御機構の変換解析を行う。特に、神経栄養因子群や生存サイトカインの発現制御状態を明らかとする。これにより、第一に、核シャトルしたProTαのエピゲノム性制御を明らかにすることにより、受容体作用機 構といったリガンド作用機構とは異なる「直接的な核内情報伝達駆動の分子機構」が提示できると考える。第二に、DAMPsの新たな機構として分類可能であると考える。第三に、本機構の生物学的意義として「対細胞ストレス 戦略として、核タンパク質が細胞核間を伝播し、細胞形質を自己保護に向けて制御す る」との仮説を証明できる。将来的に、ProTα のリプログラミング機構を模倣する化合物の創製は、脳梗塞といった脳神経系疾患のみならず、細胞外 ProTα活性が確認されている免疫系 の疾患にも寄与する可能性を有し、エピゲノム創薬に繋がる高い可能性を有する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、主に高純度プロサイモシンαタンパク質の生産と核シャトルが観察可能な標識プロサイモシンαの作製、脳神経系細胞における核シャトルレシピエント細胞の特定、並びに受容体シグナルとの差別化を行うための神経細胞発現受容体の同定を行い、計上経費ほどに支出を伴わなかったため当該助成金が生じた。 平成26年度において、当該助成金は、プロサイモシンα核シャトルレシピエント細胞における発現リプログラミング遺伝子同定・網羅的解析のための必要経費として計上する。その内訳は、発現リプログラミング遺伝子群の同定のための解析費用、発現リプログラミング遺伝子のエピゲノム状態を解析するための解析費用である。
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