高等植物の光合成反応のうち、明反応ではNADPHとATPを産生する。これらの化合物は、その後の二酸化炭素固定に用いられ、光合成エネルギー代謝の重要な代謝産物である。そのため、NADPHの産生の様子を植物の生細胞でリアルタイムに観察することは、光合成を理解する上で重要である。本研究は、光合成明反応で産生するNADPHとATPの2つの化合物のうち、NADPHについて、細胞内でリアルタイムに濃度変化を観測するセンサーを作成することを目的としている。NADPH濃度変化をリアルタイムに高感度で計測する具体的な方法は、以下の方法で行う。生体内でNADPHを結合するタンパク質とGFP誘導体の融合タンパク質を作成し、NADPH濃度変化に応答した蛍光エネルギー移動(FRET)により、その濃度変化を捉える。昨年度までに、候補となるNADPH結合タンパク質と、GFP誘導体であるCyan Fluorescent protein (CFP)とYellow fluorescent protein(YFP)との融合タンパク質の大腸菌での発現系を構築した。 本年度は、この発現系を用いて、各種発現条件を検討し、タンパク質の調製を試みた。いくつかの実験条件で、組換えタンパク質が可溶性タンパク質と回収できなかったため、低温培養、誘導条件の検討を行った。また、融合タンパク質の融合部位を変化させた複数の発現系も構築し、可溶性画分に発現するものの選抜を行った。
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