この研究は組織性カリクレインによる神経幹細胞の増殖促進作用機構メカニズムの解明のために,カリクレインの基質の同定と作用メカニズムの解明を目指した。その結果,カリクレインが神経幹細胞のNF-κB経路を抑制することが確認された。そこで,NF-κB経路を活性化する経路を調べた結果,カリクレインは IL-1 type I 受容体を切断することが示され,このタンパク質がカリクレインの基質であることが明らかとなった。NF-κB経路の活性化は神経幹細胞の分化を促進する報告があることから,カリクレインは神経幹細胞の分化を抑えることにより,みかけの細胞増殖速度を増加させていることが考えられた。
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