研究実績の概要 |
糖鎖修飾は真核細胞のタンパク質にとって主要な翻訳後修飾の一つであり、様々な疾病において糖鎖構造の違いがタンパク質の機能や安定性の変化をもたらしている例が数多く報告されている。それゆえ、特定の糖鎖構造を持つタンパク質の動態解析は糖鎖依存的におこる生命現象を紐解く上で重要である。 これまで、大阪大学の三善らによって糖タンパク質糖鎖の成分である“フコース”依存的なタンパク質の極性輸送機構の存在が示唆されているが、その分子機構の詳細は不明である。一方我々は、最近目的の糖タンパク質のうち、特定の糖を持つタンパク質のみを可視化する新技術の開発に成功した(Nature Commun. 3, 907 (2012))。そこで本研究では、この新技術を利用して糖鎖依存的な極性輸送をアッセイするシステムの開発を目指した。これまでアッセイの基質となるアルファ-フェトプロテインーGFP(AFP-GFP)の発現系を確立し、肝細胞由来であるHepG2細胞での発現に成功した。また、HepG2細胞を用いて、毛細胆管様構造ができることを既報どおり細胞の極性を保っていることを確認した。一方で細胞へのフコース修飾糖(アジ化フコース)の取り込みについてその効率が非常に低く、AFP-GFPを用いてFRETシグナルは確認できたものの、そのシグナルの特異性の確認や、ライブでのイメージングにはいたらなかった。今後この実験系を確立するためには、アジ化糖の取り込み効率を高める条件を探るとともに、AFP-GFPのトランスフェクションの効率を高めることが必要である。
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