研究課題
挑戦的萌芽研究
本研究の目的は、繊毛運動に関わる軸糸ダイニンが、周期的に切り替わる軸糸の形態変化(屈曲)に応じて活性化される機構、及び、ダイニン分子の活性化の伝播により波うち運動が制御される機構を明らかにすることである。本年度は主に、(1)単細胞真核生物である繊毛虫テトラヒメナの大核ゲノムへ目的の軸糸ダイニン遺伝子を導入するため、大核の相同組換え機構を利用し内在性の軸糸ダイン遺伝子と完全に組換えることに成功し、導入したダイニン(DYH4)の発現を確認し、目的タンパク質の精製を行った。さらに、観察プローブの蛍光タンパク質(EGFP)を融合したダイニン分子を導入したテトラヒメナのライブイメージングより、導入したダイニンは内在性ダイニン同様繊毛内に局在し、この繊毛の繊毛打運動により、テトラヒメナが遊泳することを確認した。以上より、繊毛軸糸内にダイニン分子などの目的遺伝子を導入する系が確立でき、特定のダイニン遺伝子変異体の導入が可能となった。テトラヒメナの繊毛を3次元力学計測するため、(2)テトラヒメナのガラス面の固定方法、及びテトラヒメナから繊毛を間引く方法の検討を行った。テトラヒメナの膜タンパク質などを化学的にビオチン修飾し、ガラス面に吸着したアビジン分子によってテトラヒメナをガラス面に固定することができるようになった。さらに観察に適した数の繊毛を有するテトラヒメナを得るため、pHやカルシウム依存的に繊毛を取り除く方法を検討した。さらに、(3)溶液中で繊毛の運動を光学顕微鏡によって定量するため、共焦点スキャナユニットに独自に開発したプリズム挿入型3次元位置検出ユニットを組み合わせることで、従来の顕微システムより高精度に水溶液中での繊毛の位置を検出できる顕微システムの構築を行った。
2: おおむね順調に進展している
研究計画で掲げていた、(1)繊毛観察系の構築、(2)軸糸ダイニン遺伝子の導入、及び、(3)3次元力学計測のための顕微鏡システムの構築において、予定通りの成果が得られた。特に、軸糸ダイニン遺伝子へのEGFPの導入については困難を極めたものの、大核に数十コピー存在する内在性遺伝子をすべて置き代えることができたのは、今後、組換え体を安定に維持・使用することや、観察の精度をあげること、他の遺伝子への応用などの点でとても有効である。
平成25年度に確立した技術に基づき、変異体ダイニン分子を繊毛軸糸内に導入し、繊毛打運動の3次元力学計測を行う。ダイニン変異体の組み合わせに依存した波うち運動の変化を定量し、各軸糸ダイニンの波うち運動における役割及び各種ダイニン間での協調性を明らかにしてゆくとともに、in vitro再構成系においても各ダイニンの特性を検証する。
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