研究課題
本研究の目的は、繊毛打運動に関わる軸糸ダイニン分子が、周期的に切り替わる軸糸の形態変化(屈曲)に応じて活性化される機構、及びダイニン分子の活性化の伝播により、繊毛の波打ち運動が制御される機構を明らかにすることである。本年度は、以下の(1)から(5)に記す内容について実験を行い、それぞれの結果を得ることができた。(1)平成25年度に確立した単細胞真核生物・繊毛虫テトラヒメナの大核ゲノムへの目的遺伝子の組換え導入法により、平成26年度に引き続き繊毛打運動に影響を与えると推定されたダイニン分子の変異体を、内在性の軸糸ダイン遺伝子と組換えて導入した。(2)加えて、繊毛形成の起点となる基底小体(中心子)の構成分子であるセントリン分子に蛍光タンパク質を融合して内在性のセントリン遺伝子と組換えて導入し、繊毛の基底部位の位置マーカーを確立した。(3)昨年度後半に着手したフィードバック・ステージ機構の最適化を行い、遊泳テトラヒメナの自動追跡システムを構築し、(1)(2)でテトラヒメナに導入した分子が、繊毛打運動で駆動されるテトラヒメナ個体の遊泳パターンに与える影響を定量し、テトラヒメナにおいて特定のダイニン分子が遊泳の運動速度に影響を与えることを見出した。(4)昨年度に引き続き、遊泳しているテトラヒメナの固定及び操作のため、ガラスキャピラリー先端の形状やサイズを検討し、繊毛打運動の定量に適した捕獲方法を確立した。(5)固定したテトラヒメナの繊毛打運動は、昨年度までに開発してきた3次元位置検出系およびマイクロマニュピレーションシステムを備えた光学顕微システムにより計測し、テトラヒメナ個体の活性を保ったままの状態で一本の繊毛の特定の位置の変化を3次元的空間で定量した。このように、一本の繊毛の運動を3次元的に計測する技術基盤を確立することに成功した。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件)
Molecular Biology of the Cell
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