研究課題/領域番号 |
25650052
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
新井 由之 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (20444515)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 化学発光 / 3次元 / イメージング / 顕微鏡 |
研究実績の概要 |
化学発光計測は励起光を必要としないため、励起光による光毒性や、光によって生命現象を操作するオプトジェネティクス操作との併用が可能といった利点がある。しかしながら、励起光を用いないために、例えば共焦点レーザー顕微鏡のような光学切片像をとることはできない。そこで、本研究では、レンズの特性の一つである球面収差を用いることで、化学発光計測においても光学切片像を取得することを目的としている。対物レンズの瞳径に合わせた様々なサイズの輪帯板に観測する発光を通すことで、異なる高さの光を選択的に取得した。その結果、輪帯板を通すことで、焦点外からの光を除去することに成功した。構築した光学系を用いて蛍光および化学発光タンパク質を発現する細胞のイメージングを行ったところ、輪帯板の開口数の大きさに合わせて、解像度が異なる像が取得された。さらに、輪帯板を使わない通常の画像と比べ、輪帯板を使用した場合、深さ方向の情報が異なる画像を取得することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
精密に設計した輪帯板を光路上に直線上で配置し、電動フィルターホイールを用いることで、球面収差による異なる高さの光を取得する光学系を構築した。本装置により顕微鏡装置の光学系を評価したところ、焦点外の光を除去していることは確認できたが、焦点深度が深くなっていることが明らかとなった。実際、蛍光ビーズ像を計測したところ、高開口数条件下においても、焦点深度の深い像を取得することができた。細胞での蛍光観察では、輪帯板を使用すると像の劣化がみられたが、化学発光画像では異なる焦点面の情報を含むと思われる像を得ることができた。しかしながら、像の解像度が低いため、実用的な使用にはさらなる改良が必要と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
構築した光学系により、蛍光ビーズを用いた観察を行ったところ、焦点深度の深い像を得ることができた。本光学系は、1分子計測のような輝点の観察時に、焦点外からのボケを取り除くことが可能であるため、応用可能であると考えられる。一方、化学発光イメージングにおいても、より大きな開口数をもつ異なるサイズの輪帯板を用いることで、3次元化学発光イメージングを遂行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に必須の輪帯板の製作を幾つか行ったが、求める精度を満たす輪帯板をなかなか得ることができず、製作・取得に時間を要した。そのため、光学系の構築や計測に遅れが生じた。しかしながら、化学発光計測において、輪帯板を使わない場合にくらべ、異なるイメージング像を示唆する結果を得たため、次年度にも継続して実験を行う必要があると考え、次年度へ繰越を行った。
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次年度使用額の使用計画 |
開口数が高い輪帯板を用いることで、より高解像度の像を得ることが可能であることから、最大開口数の輪帯板の構築といった、光学部品への使用に用いるほか、得られた成果を学会において発表するための旅費、および論文作成の費用に当てる。
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備考 |
補助事業期間延長承認:平成28年3月22日
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