化学発光イメージングでは、励起光を必要としないため、生体試料に対する光毒性の影響を排除できるほか、光遺伝学ツールとの併用が可能であるといった利点がある。しかしながら、励起光を用いないことから、照明光学系を用いた光学切片像の取得ができないため、3次元イメージングにおいて課題があった。本研究課題では、実レンズが有する球面収差を利用し、球面収差による光学断層像の取得を試みた。対物レンズ・顕微鏡システムに合わせて設計した輪帯板を像面に設置し、化学発光像を取得した。その結果、輪帯版の開口サイズに応じた解像度の異なる像を取得することができたが、焦点深度の深い像となった。これは、輪帯版により、光線中心部の光がカットされたことにより、光線周辺部の光が打ち消されず、結果として焦点深度の深い像形成となったと考えられる。従って、本来の目的である断層像を取得するには至らなかった。一方、本光学系は、化学発光計測に限らず、蛍光計測においても用いることが可能である。そこで、本光学系による焦点深度が深くなる効果を利用し、細胞における蛍光1分子計測において、光軸方向にスキャニングすることなく輝点を計測することにできる装置に応用可能か試みた。蛍光顕微鏡に、レーザー光による照明光学系を構築し、本輪帯板光学系を構築した。輪帯板光学系は、光軸調整が容易になるように、かつ光学系が安定するように再構築を行った。細胞を用いて全反射照明による1分子蛍光観察を行った所、細胞底面の輝点のみならず、通常の観察法ではデフォーカスされてしまう、細胞上部の輝点も観察することに成功した。
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