本研究では、膜タンパク質の新たな解析プラットフォームとして、自在にサイズ制御できる安定な脂質二分子膜ナノディスクを構築することを目的とした。本年度は、具体的に以下の研究を実施し、得られた成果は論文及び学会において報告した。 1.細胞膜環境を再現した脂質組成によるナノディスク形成 膜タンパク質の構造や機能における脂質マトリックスの役割を明らかにするために、実際の細胞膜環境を再現した様々な脂質組成でのナノディスク形成に関して検討を行った。また、前年度に合成を行った脂質分子に加えて、本年度はペプチドをはじめとする両親媒性分子もナノディスク形成機能の評価対象とし、本アプローチの汎用性について検証を行った。 2.ナノディスク形成分子を用いた細胞膜の直接断片化と膜タンパク質構造評価 膜タンパク質が存在するそのままの環境で取り出すことができるか否かを明らかにするため、ナノディスク形成分子を用いた細胞膜の破壊と断片・ナノディスク化について検討を行った。また、膜タンパク質の解析プラットフォームとしての本手法の有用性を検証するために、バクテリオロドプシンのナノディスクへの組み込みを行い、分光法を中心に構造・機能評価を実施した。
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