研究課題/領域番号 |
25650059
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
木原 章雄 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (50333620)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 脂質 / 脂質非対称 / シグナル伝達 / 細胞膜 / アルカリ / ユビキチン化 / 生体膜 / フロッパーゼ |
研究概要 |
細胞膜二重層では外層と内層の脂質組成が異なる(脂質非対称)。我々はこれまでに脂質非対称を感知してシグナルを伝える経路としてRim101経路を同定してきた。Rim101経路は外界のアルカリ化に応答する経路としても知られる。従来のモデルでは外界のアルカリ化が起こるとまずセンサータンパク質Rim21がエンドサイトーシスし,その後エンドソーム上で下流因子を集積させて転写因子Rim101を切断・活性化するというものであった。しかし我々は今回,従来のモデルとは異なり,これらのRim101経路の因子群(Rim8,Rim13,Rim20,Snf7)が細胞膜上にパッチ状に集積してシグナルを伝えることを明らかにした。また,ユビキチンリガーゼRSP5の変異体を用いた解析から,この過程にはユビキチン化が関与することも見いだした。 マイクロアレイを用いた解析から,脂質非対称が乱れた際にRim101経路依存的に誘導される遺伝子群を抽出し,機能未知のOpt2を同定した。ホスファチジルエタノールアミン(PE)のフリップに関わるLEM3欠損株ではPEが外層に露出しており,外層のPEに結合して毒性を示す薬剤Duramycinに対して感受性を示す。一方,OPT2とLEM3の二重欠損株は耐性を示した。また,PEに結合するRoペプチドにより外層に露出したPEの可視化を行ったところ,LEM3欠損株よりもOPT2とLEM3の二重欠損株ではPEの露出が低下していた。さらに,Opt2を過剰発現させると蛍光標識したPEの取り込み量が減少した。これらのことから,Opt2がこれまでに報告されているフロッパーゼのファミリーには属さない新しいタイプのフロッパーゼであることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載の項目については研究実施の概要に示した通り,殆ど全て達成することができた。脂質非対称シグナルを下流に伝える分子機構の解明及び,Opt2の機能解明のどちらについても現在論文を投稿中である。Rim21のC末端側の荷電アミノ酸の役割については現在解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
脂質非対称シグナルを下流に伝える分子機構の解明については現在の知見を精製タンパク質を用いたin vitroの解析に発展させる。また,脂質組成に影響を与える変異株中でのRim21の挙動を調べることで,脂質非対称を感知する分子メカニズムを明らかにする。Opt2については欠損株を用いた解析により生理的役割について明らかにする。また,フロッパーゼとしての特性評価を生化学的な解析により行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
Rim21のC末端親水性領域に存在する荷電残基クラスターの役割解明において,この配列とGSTとの融合タンパク質の大腸菌の発現量が低く,精製に時間がかかっているためである。 Rim21のC末端荷電残基のGST融合タンパク質の大量発現,精製,脂質との結合アッセイに必要な試薬の購入に用いる。
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