研究課題/領域番号 |
25650060
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小野寺 康仁 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90435561)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 糖代謝 / シグナル / 小胞輸送 |
研究概要 |
平成25年度に行った解析によって、本研究において着目する細胞表面分子の一つであるインテグリンに関し、糖代謝の活性によってその活性が制御されるメカニズムを担う分子群の候補を見出すことができた。これらの分子は細胞内の小胞輸送制御に関与するものであり、当初から想定していた細胞内動態制御による転写後調節の関与が正しいことを裏付けている。3次元培養した乳癌細胞においてこれらの分子群の発現を抑制すると、糖代謝を抑制した状態から生理的状態へと移行した際に見られるインテグリンの蛋白質発現亢進と下流シグナル経路の活性化がいずれもみられず、正常細胞と同等の構造を維持したまま、がん形質が回復しないことを確認している。また、これらの分子群の一部については、細胞表面に局在し糖の取込みを行うグルコーストランスポーターの細胞内動態制御にも同時に関わっていることが示唆され、糖代謝活性をさらに亢進するポジティブフィードバック制御にも寄与している可能性が見出された。これらの結果は、いわゆる「細胞内ロジスティクス」が、細胞が細胞外微小環境に対してどのように応答するかを決定する中核を担っていることを強く示唆している。 上記のような小胞輸送経路による細胞内動態制御の重要性とそれらを標的とすることによる抗がん治療の可能性について論じた総説をPharmacology and Therapeuticsにて発表した。また、本研究の基盤となる「糖代謝亢進によるがん形質の獲得」に関する論文を、The Journal of Clinical Investigationにて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に計画していた「細胞表面に局在する受容体等の解析」に関し、細胞外基質との相互作用を担うインテグリンと、糖代謝制御を担うグルコーストランスポーターについて新たな知見を得ることができた。これらは、メカニズムの全容を把握するための有用な情報に繋がるものと思われる。しかしながら、インテグリンについては、細胞内動態観察のための遺伝子構築が、当初想定していたよりも困難であることが判明し、次年度における対策が必要である。以上のことから、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通りに、平成26年度以降から乳腺組織の培養系における異なる上皮細胞間の相互作用の観察に移行する。事前の準備として、in vivoで乳腺を再構築することが可能であるマウス乳腺上皮細胞株を入手してある。この細胞株において遺伝子導入を通常の2次元培養環境下で行ったのち、マウスへの移植を行って乳腺組織を構築させてから再度in vitro培養を行えば、任意の遺伝子発現調節を行った上での詳細な細胞間相互作用の解析が可能となる。平成26年度は、まずこの実験系の確立を目指し、以降の解析を順次進行していく。また、インテグリン細胞内動態の観察法の確立についても、融合する蛍光蛋白質の再選定や抗体標識による方法への移行などを検討して速やかな解決を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
遺伝子導入等を既存の方法で実行できたため。 余剰分は再検討が必要な遺伝子構築の条件検討に使用する。
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