研究課題
挑戦的萌芽研究
生殖細胞系列は次世代に遺伝情報を伝達し、生命の連続を保証する唯一の細胞種である。このため、生殖細胞の発生にはゲノムの正確な複製や、減数分裂による多様化とともに、全個体を完全に発生させる能力の獲得が含まれる。生殖細胞の起源は始原生殖細胞であり、胚発生の初期に多能性の上皮様組織(エピブラスト)から分化して生ずる。興味深いことに、始原生殖細胞を一定の条件下で培養すると、ES細胞やiPS細胞と同様の分化能をもつ多能性幹細胞(Embryonic Germ Cell:EG細胞)へと分化する1。また始原生殖細胞は、奇形腫(三胚葉の全てに由来する細胞を含む、多能性の機能的指標の一つ)や胚生期癌の起源である。さらに、多能性幹細胞の基盤転写因子OCT3/4やNANOGの発現は、生体内では初期胚と生殖細胞系列にほぼ限定される。すなわち始原生殖細胞は潜在的に多能性を保持しつつ、その顕在化を抑制しているといえる。本研究の目的は(1)微量ChIP-seq法を用いて、始原生殖細胞と初期胚における多能性基盤転写因子群の結合部位を決定し、これらの細胞が持つ多能性の分子基盤を確立するとともに、(2)始原生殖細胞がその多能性を潜在化させ「受精とその後の発生」という単一の能力を持つ生殖細胞へと成熟する機構を解明することである。平成25年度は、多能性幹細胞の基盤転写因子群のなかでもっとも重要な因子Oct3/4に対するモノクローナル抗体を用いて、始原生殖細胞の試験管内モデル系(PGC-Like Cells:PGCLC)に対してChIP条件検討を行い、ライブラリ調製の条件検討を行った。
2: おおむね順調に進展している
Oct3/4に対する効率の良いモノクローナル抗体を同定し、ChIP条件検討、ライブラリ調整の条件検討を行い解析の準備が整いつつある。このため研究の進行状況は概ね順調であると考えられる。
PGCLC誘導系(ES細胞、エピブラスト様細胞(EpiLC)、PGCLC)について、Oct3/4のChIP-seq解析を行う。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
Nat Cell Biol
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