研究課題
挑戦的萌芽研究
ミクロオートファジーは、細胞基質の一部、あるいは小さなオルガネラが大きな液胞に飲み込まれる生理的過程であり、酵母の生育条件の適応において重要な細胞内の再組織化を担う。最近、私たちは高等動物細胞においてもミクロオートファジーが起きており、とりわけ、初期胚の原腸陥入の時期に必須の機能を果たしていることを明らかにしている。本研究では高等動物においてのミクロオートファジーの普遍性と細胞機能の関連を検討することを目的とする。研究の発足に辺り、巨大な液胞を有することが明らかになっている空腸を検討することとした。消化器官上皮細胞で特異的にCre recombinaseを発現することをおこなうため、Gata6転写因子のコーディング領域をCreの配列に置き換えたBACを構築し、マウス受精卵に導入して多数のTg動物を得た。これらをレポーター遺伝子をもつマウスと交配したところ、小腸上皮でCreの活性があるマウスは得られず、免疫ブロットなどによってもCreの発現は確認できなかった。mRNAの発現が確認されたことから、転写段階は計画通りに起きているが、Gata6タンパク質の翻訳には未知の制御機構があり、トランスジーンではその制御を再現できていないことが考えられる。平行して、既存の小腸特異的Cre発現トランスジーン(Vilin-Cre)を、mVam2(-), rab7(-)の遺伝学的背景に導入することをすすめると共にmVam2flox, mRab7flox alleleをホモにもつマウスを作出した。
2: おおむね順調に進展している
消化器官特異的にミクロオートファジー関連遺伝子を欠失するのには、当初Gata6-Creを新たに作成することを計画したが、Gata6を用いたCre発現が困難であったことから、次善の策としてのVilin-Creを用いることになった。マウス交配とホモ接合体の確認には世代時間の制約もあって時間がかかっているが、これは当初の予定通りである。また、関連する研究課題において、Ttr-Creを用いた臓側内胚葉特異的Cre発現による初期胚での遺伝子欠損の表現型の解析に成功している。
産仔が得られはじめているVilin-Cre, mVam2deltaもしくはVolin-Cre Rab7deltaのマウスと、mVam2floxホモ、rab7floxホモのマウスをかけ合わせ、出生直後、あるいは出生直前の胎仔において、エンドサイトーシストレーサーや、蛍光抗体法を駆使してオルガネラの動態を観察してミクロオートファジーの実態を明らかにしていく。さらには、新生マウスの成長生理を観察し、ミクロオートファジーの生理的意義に関しての研究を進める。
本年度はマウスの遺伝的交配が主だったこと、他の関連研究でのマウス飼育や維持管理費を効率的に運用したために、本研究課題からは実験動物購入に関わる経費のみ、手当てすることになった。研究を進めるにあたり,必要に応じ、また他の研究課題と共通する点を有機的に活用したため当初の見込額と執行額は異なった。来年度は蛍光試薬や解剖に必要な試薬などの購入を行い、当初の研究計画を実施する。
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