研究課題
マウス初期胚において「ミクロオートファジー」が起きており、原腸陥入期の母体との相互作用と胚のパターン形成に必須であることが明らかになっている。ミクロオートファジーの動物細胞でのメカニズム・生理的意義は未解明である。本研究では様々な組織におけるミクロオートファジーの実態を探ることを計画している。ミクロオートファジーをはじめとする、オルガネラ膜輸送の制御にはオルガネラ膜に存在する液胞型プロトンポンプ、V-ATPaseが重要な機能を持つ。V-ATPaseは多数のサブユニットから構成され、さらには各サブユニットにイソフォームが存在しており、組織特異的な発現をするものも含まれている。オルガネラ膜ダイナミクスやミクロオートファジー、さらには脳高次機能におけるこれらの基本的細胞機能の関わりを明らかにするため、神経特異的に発現がみとめられるV-ATPase GサブユニットのG2イソフォームを欠損するマウスを作成し、その表現型の解析を進めている。G2イソフォームの欠損に伴い、組織特異的な発現様式を示さないGサブユニットイソフォーム、G1の現存量が脳組織で顕著に増加した。すなわち、神経特異的G2の欠損はG1のアップレギュレーションを引き起こす。この量の制御は、mRNAの増加を伴わなかった。したがって、V-ATPaseのGサブユニット発現量の制御は、転写レベル、mRNAの安定性レベルではなく、タンパク質翻訳以降のメカニズムが関わっていると考えられた。今後、G2欠損マウスにおけるミクロオートファジーに関して、詳細な観察を進めて行く。
2: おおむね順調に進展している
ミクロオートファジーの観察に関してはさらなる検討が必要である。遺伝子改変マウスの作成と変異表現型の解析に関しては当初の予定以上に進み、なおかつ、予想されていない結果を得ることができている。両方の状況を鑑み、おおむね順調と評価している。
オルガネラの観察を各組織で進ることに予想以上に時間を費やしており、今後、迅速化を図りたい。また、遺伝子改変マウスは多数、作成できていることから、これらを効率的に観察する手立てを講じていきたい。
前年度よりの繰り越しを効率的に使用し、研究を進めて来た結果、当初(初年度より)の算定より年度ごとの費用が少なめに推移しているため、次年度への繰り越しが生じている。
次年度にはこれらを活用し、研究の推進と、研究発表(掲載費など)を進めていく。
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