研究課題
ミクロオートファジーは細胞基質、あるいは小型オルガネラを大きな液胞に取り込む膜ダイナミクスであり、出芽酵母などでは生理的な環境適応に重要な作用をもつ。哺乳類をはじめとする動物細胞では、しかしながら、ミクロオートファジーの実態、意義など、ほとんど明らかにされていない。私たちがミクロオートファジーを見いだしたマウス初期胚の胚体外上皮組織と、新生マウスの腸管上皮組織は様々な点で共通性を示す。そこで、本研究の最終年度では、マウス空腸上皮組織におけるエンドサイトーシス経路の解析を進めた。空腸上皮組織を構成する細胞は明確な細胞極性をもち、頂端面から活発なエンドサイトーシスを行う。エンドソームマーカーで確認したところ、頂端面の形質膜直下の膜系は初期エンドソームの性質を、核周辺のオルガネラはリソソームの性質をもつことが確認できた。エンドソーム間の膜輸送を担う分子であるsyntaxinの遺伝子破壊マウスでも腸管の細胞形態は変化せず、この組織においてsyntaxinの機能は必須ではないと考えられる。さらに、膜ダイナミクスを担うV-ATPaseのsubunit Gの遺伝生理学的な研究を進めた結果、神経特異的G2の欠損はエンドサイトーシス・ミクロオートファジーに顕著な影響を与えないことを明らかにした。一方、腸上皮で低分子量GTPaseの機能を喪失させたところ、エンドソームの形態が異常となり、ミクロオートファジー経路に異常が生じていることが考えられた。空腸上皮での膜ダイナミクスの異常は新生仔の発育に影響しており、出生後の体重増加が野生型に比べて低下する。糞便に明らかな異常は見られていない。加齢に伴うシステミックな生理との関連に関してさらなる観察によって明かにしていく基礎を築くことが出来た。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件)
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