研究課題
挑戦的萌芽研究
小胞体に局在するOASISファミリーと呼ばれる一群の膜貫通型転写因子は小胞体ストレスセンサーとして機能する。これら分子群は小胞体ストレスに応答して膜内切断を受け、転写因子として機能する細胞質ドメインと、細胞外に分泌される小胞体内腔ドメインに切り離される。本研究課題では、分泌された小胞体内腔ドメインの解析を通して、『小胞体ストレスの細胞間情報伝達』の仕組みと生理的役割解明を目指している。今年度は小胞体ストレスセンサーBBF2H7の小胞体内腔ドメインに結合する因子と、その因子に結合した後の細胞増殖に及ぼす影響および細胞内シグナル伝達について解析した。その結果、BBF2H7の小胞体内腔ドメインは細胞外に分泌された後、ヘッジホッグおよびその受容体であるPtch1と結合し、ヘッジホッグシグナルを活性化することを見出した。またヘッジホッグシグナルの活性化に伴い、細胞周期関連遺伝子の転写も活性化され最終的に細胞増殖を促進する作用があることもわかった。BBF2H7の小胞体内腔ドメインのリコンビナントを作成しこれに対するモノクローナル抗体の取得を試みた。その結果、3種のモノクローナル抗体を得、そのうち2種のモノクローナル抗体には、BBF2H7小胞体内腔ドメインとヘッジホッグおよびPtch1との結合を阻害する機能があることがわかった。さらにこの抗体をBBF2H7が発現しヘッジホッグシグナルが活性化しているグリオブラストーマU251MG細胞の培養上中に添加すると、細胞増殖が有意に抑制されることがわかった。以上から、作成したモノクローナル抗体には、ヘッジホッグシグナルが活性化している腫瘍細胞の増殖を阻害させる働きがあり、癌に対する抗体製剤としての可能性が示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究課題では以下の課題に取り組む。1)小胞体ストレスセンサーOASISファミリーの小胞体内腔ドメインが有する生物機能を明らかにするため、細胞膜表面上で結合する特異的受容体を同定する。2)小胞体内腔ドメインと受容体が結合したのちのシグナル経路についても明らかにする。3)各センサーの小胞体内腔ドメインの機能阻害モノクローナル抗体を作成する。抗体を用いて各小胞体内腔ドメインのin vivo機能を解明する。初年度は小胞体ストレスセンサーBBF2H7を中心に1)および2)を進める計画であったが、3)についても進めることができ計画以上に進展していると判断できる。
今年度は、小胞体ストレスセンサーの分泌断片の解析が中心であったが、次年度はOASISなどの他のファミリータンパク質についても分泌小胞体内腔ドメインの機能を明らかにする予定である。さらにそれら分子と疾患との関連も見出し、創薬研究にも発展させていきたいと考えている。
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