研究課題
本研究は、生きたヒト培養細胞に生体分子結合ビーズを導入し、それを種として細胞内に「人工細胞核」を創製することを目指すものである。昨年度の解析から、DNAや核膜形成関連タンパク質であるRanGTPaseなどが結合したビーズの周囲には、核膜に類似した形態の膜構造(核膜様構造)が形成されることが分かった。そこで本年度は、これらの核膜様構造の機能評価を行った。まず核膜孔複合体の構成因子に対する免疫染色を行ったところ、DNAビーズ周囲にはほとんどシグナルが見られなかったのに対し、RanGTPase結合ビーズの場合にはシグナルが高頻度に検出された。一方、いずれのビーズについても、核移行シグナル配列を付与した蛍光タンパク質の、ビーズ表面への蓄積は見られなかった。上記と並行して、DNAビーズ周囲における核膜様構造形成の意義を調べた。オートファジーのマーカーであるGFP-LC3、および、昨年の解析でDNAビーズへの集積が見られていたmRFP-BAFの両方を発現する細胞にDNAビーズを導入して、生細胞蛍光観察と電顕観察を組み合わせた観察法により解析したところ、ビーズ周囲へのBAFの集積はLC3の集積に先立つこと、および、時間の経過とともにLC3のシグナルは消失し、核膜様構造がビーズ全体を覆って存在するようになることが分かった。また、BAFノックダウン細胞では、DNAビーズは効率よくオートファジー経路へ取り込まれた。これらの結果は、BAFが外来DNAのオートファジー回避に役立つDNAセンサー分子として働くことを示している。以上のように、生体分子結合ビーズをヒト培養細胞に導入することにより、様々な性状の核膜様構造をビーズ周囲に形成させ解析できる実験系の構築に成功した。今後、より詳細な条件検討を進めることによって、より機能的な人工細胞核の創製に繋がるものと期待できる。
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Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1073/pnas.1501235112
IEEE Journal of Selected Areas in Communications
巻: 32 ページ: 2417-2431
10.1145/2619955.2619971
http://www.nict.go.jp/press/2015/05/19-1.html