研究実績の概要 |
本研究では、「脳内で任意に標識した神経細胞の遺伝子発現プロファイル」を取得可能にする技術基盤開発と研究例提示を目標としている。これまで、発生過程にあるショウジョウバエ嗅覚系2次神経PNを分散・単離し、そこから線形性を保った状態でのcDNAラベル・増幅に成功した。よって本年度は、得られた遺伝子プロファイルの有効性検証を行った。 まず、これまでの私の研究で扱っているEph/Ephrinの発現に関して検証した。これまでEph/Ephrinに関しては、PN樹状突起ターゲティングに関わる事を示している。しかし、Eph/Ephrinに対する良い抗体が存在しないため、その発現解析は困難であった。今回得られた遺伝子発現データを解析すると、Eph、Ephrin共にPNにおける顕著な発現が確認された。この事実は、抗体作成が困難なタンパク質に関しても、今後は本遺伝子発現データを解析することでその発現量を確認することができることを意味している。更に、興味深い結果として、免疫システムで働くことが知られているTollレセプターファミリーに属する遺伝子の発現が確認できた。特に、Toll-6, 7の発現が顕著であった。ところが、本研究中に「PN樹状突起ターゲティングにToll-6, 7が強く関与すること」が国際科学雑誌に発表された(Neuron 85, 1013-1028, 2015)。研究成果が先に報告されたことは残念であるが、これは同時に、本遺伝子発現データが樹状突起ターゲティングに関わる新奇分子の探索に有効であることを示唆している。今後は、本遺伝子発現データを元に、どのような遺伝子がPN樹状突起ターゲティングに関わっているかを検証していく予定である。
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