研究課題
大脳新皮質の「層構造」は全てのほ乳類に認められながらも、ほ乳類以外の相同領域には存在しない新奇な構造である。そのため、哺乳類の進化に伴って突如現れた、進化的に新しい脳構造であると考えられてきた。しかし、これまでの我々の研究で、ニワトリの脳にも、哺乳類大脳新皮質の上層と下層に存在する神経細胞のサブタイプが存在することが明らかになってきた。少なくとも培養条件下において、ニワトリ神経前駆細胞は、哺乳類型の層特異的遺伝子の発現を駆動できることから、哺乳類との間で何らかの遺伝学的基盤の共通性があることが予想される。そこで、ニワトリゲノムを導入したトランスジェニックマウスを作成して、遺伝学的基盤の共通性について検討した。もしも層特異的遺伝子の発現制御がニワトリとマウスで保存されているならば、層がないニワトリの遺伝子であっても、層が存在するマウス大脳新皮質の環境下におけば、層特異的に発現する可能性が考えられる。そこで、哺乳類の層特異的遺伝子を3種類選び、これらのニワトリオーソログ遺伝子を含むゲノムBAC計6種類について、GFPレポーター遺伝子を組み換え挿入した。これらのBACを用いてトランスジェニックマウスを作成したが、マウス新皮質において再現性のみられるレポーター発現は検出できなかった。これはハイリスク挑戦的な実験であり、この結果がすなわちニワトリの哺乳類との遺伝子発現制御の共通性を否定するものではないが、新皮質「層構造」の共通性はそれほど単純ではない、と考えられた。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
Cerebral Cortex
巻: [Epub ahead of print] ページ: in press
doi: 10.1093/cercor/bhu129
http://www.nig.ac.jp/Research-Highlights/1468/1515.html