研究課題/領域番号 |
25650090
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
上村 松生 岩手大学, 農学部, 教授 (00213398)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 環境応答 / モデル植物 / ミナトカモジグサ / 細胞膜 |
研究概要 |
1. 凍結耐性の評価:細胞膜のIntegrityを評価する電解質漏出法で低温処理前後の植物体の凍結耐性を評価したところ、低温馴化前では-4℃程度までしか耐えられなかったものが低温処理1週間で-7.5℃程度まで耐えられるようになった。それ以降4週間の低温処理ではと甌穴耐性の増加はみられなかった。従って、Brachypodiumはシロイヌナズナ同様に比較的急速に低温馴化することが示唆された。 2. 低温誘導性遺伝子発現:低温馴化初期期間(48時間)でシロイヌナズナなどの植物の低温馴化過程において報告されている低温誘導性遺伝子(CFBFs、CORs、LEAsなど)と相同な遺伝子の発現をRT-PCR 法により解析したところ、転写因子CBFsは低温処理開始後1~2時間後に、CORsやLEAs遺伝子は低温処理開始後4~8時間後に発現が増加することが判明した。従って、植物界に広く見られる転写因子CBFsによって支配される低温誘導性遺伝子発現系がBrachypodiumに存在することが示唆された。 3. 細胞膜プロテオーム解析:凍結傷害発生の初発部位である細胞膜を対象にshotgun proteomics 法によりプロテオーム解析を実施したところ、低温馴化の時間によって発現誘導あるいは抑制されるタンパク質はかなり異なっていたが、低温馴化期間を通じて変動しているものも多くみられた。低温馴化期間を通じて増加していたタンパク質にはデハイドリンや熱ショックタンパク質などが含まれており、Brachypodiumの低温応答性も他の植物と同様にストレス応答性タンパク質は関与している可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度当初に計画していた実験項目は、一部を除いてほぼ終了した。プロテオーム解析はもう少し時間を掛けて行う必要があるが、平成26年度中には終了するものと考えられる。他の項目については確認実験が必要な部分もあるが、予定通り行われた。
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今後の研究の推進方策 |
実験に使用した系統Bd21は、ゲノム配列が報告されている系統であり、種子繁殖が容易で変異体などの解析ツールも多く揃っている。しかし、凍結耐性および低温馴化能力という面からみると、凍結耐性はそれほど高くなく、他の系統を用いた基礎的な実験が必要であると考えられる(ただし、発芽に長い低温期間を要求する系統があるなど解決すべき点は多々存在する)。それと並行して、当初研究計画に基づき、Bd21系統を使って他の環境ストレス耐性をチェックする実験を行い、Brachypodiumが環境ストレス耐性研究にどの程度利用できるかを検討する。
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