研究課題/領域番号 |
25650094
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
町田 泰則 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 特任教授 (80175596)
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研究分担者 |
伊藤 正樹 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (10242851)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | シロイヌナズナ / 細胞分化 / 分化の鍵遺伝子 / 遺伝子転写 / 岡崎フラグメント / 不連続DNA複製 |
研究概要 |
本研究では、シロイヌナズナの胚や葉形成の鍵となっている遺伝子の転写制御が、不連続的DNA複製という複製の非対称性(リーディング鎖として複製されるのか岡崎フラグメント(OF)として不連続的に複製されるのか)と関連しているかどうかを調べる。具体的にはまず、そのような鍵遺伝子に注目して遺伝学的にその可能性を検討する。さらに鍵となる遺伝子領域のOFをDNA鎖ごとにマップして転写方向との関連性を調べる。本年度は、OFの形成に関わる遺伝子の変異により鍵遺伝子であるWUS(幹細胞形成)、ETT/ARF3(葉原基形成)の転写レベルが影響を受けるかどうかを検討することにした。これらの遺伝子レベルの上昇や発現領域が変化すると、特徴的な葉の形態異常が観察され、表現型解析で転写レベルを推定できるからである。また、すでに我々の解析により、WUSはBOB1やFAS1遺伝子の変異により、ETT/ARF3はAS2遺伝子の変異により、転写レベルが若干上昇することがわかっている。WUSでは38キロ塩基、ETT/ARF3では3キロ塩基上流に複製起点がある。そこで、OFが蓄積されると期待される種々の遺伝子の変異を、bob1変異体とas2変異体に導入した。OFが蓄積されると期待される遺伝子変異体として、TEB (polymerase I のホモログ) 変異体、ICU2 (polymerase αのホモログ) 変異体、AtLIG1A/B (ligase ホモログ) 変異体を選び、bob1, fas1, as2 変異体と交配した。現在までに二重変異体を含むと期待されるF2世代の種子を得た。今後、F2植物で、形態異常が亢進されるかどうかと転写レベルの変化を解析する予定である。OF形成に関わる遺伝子変異により異常が亢進されれば、OFが由来するDNA鎖とこれらの遺伝子転写の方向との間に相関がある可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
少なくとも表現型の解析までは進む予定であったが、二重変異体の作成に予想以上に時間がかかり、十分に進んでいない。大きな理由としては、アメリカ合衆国とイギリスからのT-DNA 挿入変異体の入手に半年近くかかったことがあげられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の重要な材料であるF2 種子がそろったので、表現型の解析により、細胞分化と不連続複製との関連性が予測できる実験を遂行できると期待している。表現型を観察すると同時に鍵遺伝子の転写レベルの解析も行う。さらに、計画に従い、岡崎フラグメント(OF)の蓄積量が上昇しているかどうか検討する。蓄積している多重変異体が得られれば、OFを抽出して次世代シーケンサーにより塩基配列を決定し、鍵遺伝子DNAのどちらの DNA 鎖からOFが由来しているかを調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の出発材料であるシロイヌナズナの変異体をアメリカ合衆国とイギリスに発注していたが、到着が半年近く遅れたため、研究を進めることが困難であった。また、大学内の建物新築にともない実験温室の移転を余儀なくされたことも、研究の遅延の原因となった。表現型解析と鍵遺伝子の転写レベルの実験のための費用を次年度に繰り越した。 研究の進展は半年遅れたが、多重変異体の作成は順調に進んできた。実験温室も矮小であるが借用できることになり、表現型解析と遺伝子発現解析をする準備ができた。今年度は、繰越した経費でこれらの実験を行い、これと平行して早急に分子遺伝学的実験により岡崎フラグメントが蓄積されている多重変異体を同定する実験をスタートさせて、遅れを取り戻したい。
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