研究課題/領域番号 |
25650096
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田村 謙太郎 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40378609)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 相互作用 / インタラクトーム / シロイヌナズナ / ビオチン |
研究概要 |
タンパク質間相互作用ネットワークを解明するインタラクトーム解析は今や機能ゲノム科学の最重要の分野の1つとして認識されているが,植物細胞における確固たる手法の確立はまだされていない.網羅的なタンパク質間相互作用の情報の効率的な取得のために,本研究課題では改変型ビオチンライゲース(BirA)を用いた新規インタラクトーム解析の手法の確立を目指している.特に,未だ共通理解の得られていない植物の核膜に注目した解析を行った. まず最初に,申請者らが最近同定した核膜孔タンパク質Nup136および核内膜タンパク質KAKU4それぞれをBirAと融合させたタンパク質を発現する形質転換シロイヌナズナを作成した.融合タンパク質を高発現する形質転換体ラインを選抜後,蛍光抗体染色法により,これら融合タンパク質が核膜に局在することを確認した.次に,これら形質転換体を培養している培地にビオチンを加え,一定時間後タンパク質を抽出してウエスタンブロットに供した.アビジンーhorse radish peroxidaseを用いてビオチン化タンパク質を特異的に検出したところ,野生型では見られないタンパク質のバンドが形質転換体で複数検出された.これらの結果から,BirA融合タンパク質が植物細胞内でもビオチンライゲース活性を有することを示している.現在,アビジンビーズカラムを用いて形質転換体で特異的にビオチン化されたタンパク質の精製を試みている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
植物細胞でBirA(改変型ビオチンライゲース)を発現させた例はこれまでに報告がなかったが,本研究ではBirA融合タンパク質を高発現する形質転換シロイヌナズナのラインを複数単離することが出来た.同時に,培地にビオチンを加えることにより,形質転換体で特異的なビオチン化タンパク質も検出できたことから,BirAによるインタラクトーム解析が行える可能性が強く示せた.現在,アビジンカラムによるビオチン化タンパク質の精製を試みている.当初,培地中の過剰なビオチンが精製を阻害してしまっていたが,アセトン沈殿によるタンパク質溶液の交換を行うことで,この問題を克服しつつある.動物細胞の報告と比較して,形質転換シロイヌナズナではビオチン化タンパク質の総量が少ないようで,いかにしてビオチンを効率良く植物細胞に取り込ませるかが今後の課題である.
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今後の研究の推進方策 |
今後はビオチン化タンパク質を効率良く精製し,質量分析計によってタンパク質の同定を行う.克服すべき課題として,より大量により特異的にビオチン化タンパク質を形質転換体から抽出・精製を行うことが必要と考えている.特に,葉緑体由来と思われる内在性のビオチン化タンパク質の混入を出来るだけ抑えるために,今後は形質転換体植物体の根または培養細胞をからタンパク質を抽出して精製を試みる.
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