研究課題/領域番号 |
25650098
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小山 時隆 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30324396)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 概日リズム / 光照射 / cAMP |
研究実績の概要 |
本研究課題は、植物体における微小領域がその周辺組織や個体全体に与える影響を評価するための、長期間かつ局所的に光照射を行える実験系の確立を目的とする。昨年度開発したウキクサを材料とする微小領域の長期的な観測系を元に、概日リズムに対して実際に局所的な光応答をさせることを試みた。様々なトライアルの中で、安定的に解析結果をえる手法を確立し、同一個体内で概日リズムを示す領域と示さない領域、さらに同期している領域と同期していない領域を生み出すことに成功した。また、パーティクルボンバードメント法による遺伝子導入を様々なウキクサに応用することに成功したため、今後、様々な大きさ/形態のウキクサを用いて局所的光照射系を応用することが可能になった。また、ウキクサの安定形質転換体の作出にも成功したため、今後はパーティクルボンバードメント法による一過的発現系の枠を超えた解析が可能となった。また、細胞内や細胞間の信号伝達動態を観測するための、cAMP応答性ルシフェラーゼの植物細胞内での機能性を評価し、外部から投与したcAMPに対して発光レベルが増加することを確認した。cAMPに対する応答性のことなるルシフェラーゼを試した結果、より低濃度の(外部投与)cAMPで植物細胞において発光が観測できる系を作った。一方で、光応答性のcAMP合成遺伝子共導入による生物発光の誘導を検出するには至っておらず、今後、植物細胞において高効率に働くcAMP合成酵素を探索する必要性が生じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の第一目標である、微小領域への長期的な光照射と、そのスケジュール中での近傍組織の生物発光概日リズムの同時測定、リズムの光制御に成功しており、計画は達成したと言える。一方で、cAMPをメッセンジャーとする信号伝達の人工的な制御系の開発では、cAMP応答性ルシフェラーゼの活性測定にとどまり、cAMP合成制御系の開発が急がれる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画ではH26年度が最終年度であったが、局所的光照射系の論文作成に必要な実験が残っており、H27年度も期間を延長して引き続き研究を行う。一方で、cAMPによる信号伝達系の活性化事例を得ることも目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
H25-26年度は研究計画に従って研究を進め、局所光照射系開発に関する論文作製段階まで達成することができたが、結果の再現性確認等の作業が残っており、このために確保してあった予算の執行ができなかった。またcAMPを用いた系の開発においては、合成酵素の働きを確認することができず、新たな候補酵素の探索等に時間を取られてしまい、その先の実験ができなかったため、予定していた予算の執行ができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
H27年度においては、前年度までに行えなかった実験のための消耗品費(主に試薬代:250,000円)、研究発表のための旅費(京都―東京 1名2泊: 50,000円)、論文出版費用(50,000円)に使用する計画である。
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