研究課題
真核細胞内には生命活動に必須な7種の膜系オルガネラがある。DNAを含む複膜系(細胞核、ミトコンドリア、色素体)3種とDNAを含まない単膜系オルガネラ(小胞体、ゴルジ体、リソソーム、ペルオキソソーム)4種である。一般に動植物細胞では細胞核以外のオルガネラの数が数百から数千と多く、オルガネラの分裂・増殖の研究には不適当であった。そこでオルガネラを最小単位含み、光の明暗で分裂を同調化させることができる原始紅藻Cyanidioschyzon merolae (シゾン)を見出し、世界ではじめて複膜系の色素体とミトコンドリアの分裂・増殖に必須な分裂マシン(PD、MD)を発見してきた。一方、単膜系のオルガネラでも分裂マシンがあると予想し解析したが明瞭な分裂マシン構造を発見することができなかった。本研究では、予備実験で分裂マシンがあると示唆されたマイクロボディ(ペルオキシソーム)において、ゲノム情報を基盤にしたオミクス科学を使って分裂マシンの詳細な解析をした。その結果、分裂マシンはダイナミン(ミトコンドリアのDnm1に類似)を主とする外側リングと、細い繊維の束を主とする内側リングの複合体であることがわかった。分裂の最初と最後におけるダイナミンの量が変動しないことから、分裂マシンの分裂面での収縮は、細い繊維の分解により起こっていることが示唆され、マイクロボディの分裂モデルを提案した。複膜系分裂マシンの収縮はダイナミンと細い繊維の滑りで起こることが分かっており、今後は単膜系、複膜系両者の分裂機構の詳細な解析が必要である。
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