研究課題
本研究では、これまでの我々のマウスでの研究で明らかになった多能性幹細胞が生殖細胞としての性質を獲得することを抑制する機構が、動物種を越えて保存されている可能性を検討することを目的とする。そのために、マウスES細胞で生殖細胞特異的遺伝子の発現を抑制するMax, Brg1について、プラナリアおよびニワトリ胚で、ノックダウンを行い、生殖細胞特異的遺伝子の発現誘導を調べる。平成26年度の研究では、プラナリアでMaxをノックダウンすると、6種類の生殖細胞特異的遺伝子が発現上昇傾向を示し、そのうちの2遺伝子については有意に発現が上昇することを見出した。またBrg1のノックダウンでも同様の遺伝子の発現上昇傾向が見られたが、個体による発現のばらつきが大きいと考えられた。またニワトリ初期胚の多能性幹細胞であるブラストダーム細胞を培養し、Maxのモルフォリノを導入してノックダウンを行うと、生殖細胞特異的に発現するCVH遺伝子を発現する細胞数の有意な増加が見られた。しかし予想に反して、モルフォリノが導入されている細胞の多くはCVH陰性で、周辺細胞でのMaxノックダウンが細胞非自律的に隣接細胞でのCVH遺伝子の発現を誘導している可能性が示唆された。一方で、Maxのノックダウン効率が悪いことがわかり検討が必要であると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
プラナリアとニワトリ胚で、ともにMax等のノックダウンによる生殖細胞遺伝子の発現誘導が示唆され、平成27年度に、それらの結果をさらに確認し、データを加えることにより目的に沿った研究成果を挙げることが期待できるため、研究計画はおおむね順調に進んでいると判断できる。
プラナリアのMaxノックダウンについては、in situハイブリダイゼーションにより、生殖細胞遺伝子の発現変化の詳細を調べる。またBrg1ノックダウンでは、ノックダウンの期間等の条件を検討し、生殖細胞遺伝子の発現誘導条件の最適化を試みる。ニワトリ初期胚細胞でのノックダウンは、モルフォリノの導入方法などのノックダウン条件の最適化を試みる。
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