研究課題/領域番号 |
25650114
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
加藤 明 東京工業大学, 生命理工学研究科, 助教 (40311336)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ホウ酸 / イオン輸送体 / アクアポリン / 細胞増殖 |
研究概要 |
ホウ素は植物の必須栄養素として知られ,微量のホウ酸は動物においても細胞の増殖や胚の発生に必須であるとされるが,過剰の摂取は毒性を示す。動物のホウ酸代謝やその生理機能はほとんど明らかでない。我々は魚類の海水(高塩)適応機構を解析する過程で,魚が海水中に含まれるホウ酸の過剰摂取から身を守るためにホウ酸を尿中に濃縮して排出することを見出した。さらにホウ酸イオンB(OH)4- チャネルSlc4a11と非イオン型ホウ酸 B(OH)3 チャネルaquaporin 8(AQP8)を同定して電気生理学的な特性を解き,それぞれがホウ酸排出とホウ酸取り込みを担う事を明らかにした。 同様のホウ酸輸送システムがヒト・マウスなどの哺乳動物にも存在するか確かめるために,ヒト・マウスSlc4a11及びAQPファミリーのホウ酸輸送活性をアフリカツメガエル卵母細胞の発現系を用いて解析した。ヒト・マウスAQP8は非イオン型ホウ酸を良く透過することが確認され,ホウ酸チャネルとして機能することが明らかと成った。一方,ヒト・マウスSlc4a11のホウ酸イオン輸送活性は検出することが出来なかった。ヒトSlc4a11がホウ酸輸送以外にどの様な活性を有しているか,現在解析を継続中である。ヒトSlc4a11はNa+/H+交換輸送活性を有するという報告があることから,比較対象として他のNa+/H+交換輸送体(zebrafish NHE3)の活性解析を行い,Na+/H+交換輸送体の活性測定系の開発を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト・マウスaquaporinの網羅的なホウ酸輸送活性解析は順調に進んでいる。当初の予想通り,アクアグリセロポリンに属するファミリーの多くはホウ酸輸送活性を有することが明らかと成った。一方,尿素やグリセロールと言った他の基質の特異性は,ファミリー間で違いが見られた。ヒトSlc4a11は2004年に他のグループからNa-ホウ酸共輸送体活性として報告され,我々はフグSlc4a11がホウ酸イオンチャネルであることを見出した。しかしその後のヒトSlc4a11の解析からはホウ酸輸送活性は全く検出できていない。別のグループからも,ヒトSlc4a11がホウ酸を輸送しないという結果が報告されており,2004年の報告が間違っている可能性が示唆されている。
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今後の研究の推進方策 |
ヒトSlc4a11がホウ酸輸送体でないことが明らかになりつつある。ヒトSlc4a11の真の活性を探索する解析を継続する一方で,ホウ酸代謝研究のターゲットからは除外する必要があると考える。すなわち,ヒト・マウスではホウ酸代謝がaquaglyceroporinファミリーだけで制御されている可能性が高く,従って今後はaquaglyceroporinを中心に解析を進める。動物培養細胞の培地にホウ酸を添加し,遺伝子発現の変化やシグナル伝達を観察する。またホウ酸の添加により活性化される重炭酸イオン輸送体の詳細な解析を行い,その作用機序を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
ヒトSlc4a11の活性解析が予想外の結果を示したため,その活性解析に時間を多く割いた。そのため,ホウ酸により活性化される重炭酸イオン輸送体の解析を次年度に変更した。 ホウ酸により活性化される重炭酸イオン輸送体の解析を行う上で必要な消耗品の購入に充てる。
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