研究課題/領域番号 |
25650117
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
寺北 明久 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30212062)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ロドプシン / Gタンパク質共役型受容体 / 情報伝達 / 光遺伝学 |
研究概要 |
多様な動物のロドプシン類の性質を利用して、新しい光遺伝学的技術の確立を試みるために以下の研究を行った。 具体的には、細胞内cAMP濃度を調節する3つのロドプシン類(ハマダラカOpn3、アンドンクラゲロドプシン、パラピノプシン)や、そららのキメラタンパク質を作製し、培養細胞を用いて発現量や光反応性(cAMPの変化量)を解析し、光遺伝学ツールとして有用なキメラタンパク質の選別を行うとともに、選別されたロドプシン類を用いたトランスジェニックマウスの作製に着手した。具体的には次の通りである。 (1)3つのロドプシン類について、照射光の波長とcAMP変化の大きさとの関係を解析した結果、以下の2種類に分類できることが分かった。1つは、照射波長の効果が吸収スペクトル特性と良く一致するロドプシン類であり、一般的なロドプシン類の性質と考えられた。もう1つのパターンは、cAMPの減少は暗状態の吸収スペクトルと対応した波長依存性があるのに対して、光産物の吸収特性とほぼ一致して、cAMPの増加が起こるロドプシン類を見出した。 (2)3つのロドプシン類それぞれについて、Gタンパク質との相互作用部位である細胞内第三ループを異なるロドプシン類のものと置換した変異体を作製し、培養細胞に導入し、cAMPの変化量等を解析した。その結果、照射する光の波長により、細胞内二次メッセンジャーの濃度を増加させたり、減少させたりできるキメラタンパク質の作製に成功した。 (3)上述(2)で作製したキメラロドプシン類のトランスジェニック動物(ゼブラフィッシュ、マウス)を作製するための遺伝子コンストラクトの作製を終了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光遺伝学に用いるロドプシン類の作製およびその分子特性の解析については、順調に進めることができた。特に、キメラタンパク質を作製することにより、ほとんどの種類のロドプシン類をGs共役型に変換することに成功したことは、さまざまな分子特性を持つロドプシン類が細胞内CAMPの上昇を引き起こすツールとして利用可能であることを示唆する。これらの点は、当初の研究計画以上に進展したと言える。一方で、これらのロドプシン類の生体への導入は準備が終了し、トランスジェニック動物の作製に着手できた段階である。したがって、全体として、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度作製したキメラロドプシン類の中で、培養細胞を用いた解析により発現量および光反応性が光遺伝学的利用に優れていると判断されたロドプシン類について、遺伝子導入動物(マウス、ゼブラフィッシュ)の作製を速やかに完了する。そして、それら動物を用いて、作製さいたロドプシン類の光遺伝学的利用の有用性を行動実験などにより解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
遺伝子導入に用いてるキメラタンパク質について、培養細胞を用いて解析したところ、予想外の発見があった。遺伝子導入動物の作製の開始は、その解析が終了する必要があったため、遺伝子導入動物の作製を遅らせる必要が生じた。そのため、遺伝子導入動物を作製するための経費が次年度使用額となった。 既に準備が整っている遺伝子導入動物の作製を次年度に速やかに開始し、生じた「次年度使用額」を使用する。
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