研究課題/領域番号 |
25650118
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
日下部 岳広 甲南大学, 理工学部, 教授 (40280862)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | GnRH / メダカ / 中枢神経系 / 網膜 |
研究概要 |
メダカGnRH2遺伝子の転写制御領域を蛍光レポーターに連結したDNAを組み込んだトランスジェニック個体を用い、細胞特異的マーカーと2重染色を行うことで、GnRH2を発現する細胞の同定を試みた。網膜においては、視細胞層よりも内側に位置する細胞層で蛍光レポーターの発現が検出された。in situハイブリダイゼーションにより、内在性転写産物の空間的分布様式を解析したが、間脳における既知の細胞集団以外における発現は検出できなかった。また、GnRHに対する特異的抗体を用いた免疫染色によっても、明瞭なシグナルを得ることができなかった。 個体レベルのGnRHの機能解析実験として、機能阻害実験と強制発現実験を行った。メダカGnRH2前駆体に対するアンチセンスMOをメダカ卵に顕微注入することにより、胚における一過的機能阻害を試みた。アンチセンスMOの注入により、中枢神経系や眼の発達異常がみられた。一方、MOの標的配列に変異を導入したGnRH2 mRNAを共注入したところ、発生異常が軽減され、特異的な効果であることが示唆された。また、GnRH2 mRNAの注入によりGnRH2を過剰発現させた個体において、発生初期の神経細胞を染色するCD57を用いた免疫染色を行ったところ、陽性の細胞がより多く観察され、GnRH2の過剰発現により、神経細胞の分化が異所的に促進された可能性が考えられた。アンチセンスMOの効果は一過的であるため、永続的に機能阻害する方法として、最近開発されたCRISPR-Cas9法を用いた遺伝子破壊個体の作製に着手した。 GnRH2を発現する神経細胞の生理機能を解析する手段として、蛍光カルシウムセンサータンパク質G-CaMPを用いて細胞の活動をリアルタイムで可視化することを検討した。予備実験として、ホヤ幼生の神経活動をG-CaMPにより可視化することに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
機能阻害実験と強制発現実験を行い、遺伝子機能に関する知見が得られた。永続的な遺伝子機能改変個体の作製法として、当初の計画ではTATEN法による遺伝子破壊を予定していたが、より簡便で確実な方法として、CRISPR-Cas9法が報告されたため、TALENに代わる方法として、これを取り入れた解析に着手した。すでに、CRISPR-Cas9によりGnRH2をコードする領域を高い効率で遺伝子破壊できることを確認している。また、次年度に予定していたG-CaMPを用いた細胞活動の解析について、予備実験に成功した。以上の点から、おおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度はアンチセンスMOを用いたノックダウン実験、mRNAの注入による強制発現実験により、GnRHの新奇機能を示唆する結果を得ることができた。しかし、これらの実験手法による遺伝子機能改変効果は一過的であり、また、非特異的な効果である可能性も含め慎重に検討する必要がある。一方、CRISPR-Cas9法を用いたゲノム編集技術により遺伝子機能改変個体の作出がなされれば、GnRHの生理機能に関してより確実な情報が得られると期待できる。すでにCRISPR-Cas9法によるGnRH2遺伝子破壊を確認しており、今後は、遺伝子破壊系統の樹立とその表現型の解析にとくに力を注ぐ予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
ほぼ予定通りに執行したが、少額(192円)が残ったため、次年度に使用することとした。 上記の通り、ほぼ計画通り執行しており、当初の予定通り使用する。残額は翌年度請求分と合わせて有効に活用する。
|