研究課題
GnRHを永続的に機能阻害する方法として、近年開発されたCRISPR-Cas9法を用いた遺伝子破壊(ノックアウト)個体の作製を行った。前年度末の時点で、メダカGnRH2遺伝子中のGnRHペプチドをコードする領域を標的としてガイドRNAを設計し、Cas9ヌクレアーゼmRNAとともに、メダカ受精卵に顕微注入法により導入し、GnRH2欠損個体の作製を試みた。前年度末の時点では、F0個体において、高頻度でGnRH2コード配列に欠失変異をもつ個体を得ることができ、さらに、ゲノム編集を施したF0個体を野生型個体とかけあわせて、GnRH2欠損変異をヘテロにもつF1個体の作製に成功した。そこで平成27年度は、GnRH2欠損変異をヘテロ接合でもつ個体どうしのかけあわせによって、変異をホモ接合にもつF2個体を得た。さらに、F2ホモ個体をF2ヘテロ個体とかけあわせ、F3のホモ個体とヘテロ個体を得た。GnRH2欠損個体は、形態的には正常であり、生殖能力においても大きな差異は認められなかった。また性比も大きな偏りはみられなかった。系統発生学的比較解析によって知見を得ることを目的として、後脳および脊髄における新奇GnRH細胞群をみいだす端緒となったホヤ幼生のGnRH神経系の解析を前年度に引き続き行い、脳の前方背側の将来口になる部位付近に存在するGnRHニューロンが、嗅覚の感覚細胞と類似することを明らかにし、さらにこの細胞が、発生学的に頭部プラコードとよく似た性質をもつことを明らかにした。感覚器をはじめ頭部の重要な構造をつくる頭部プラコードが獲得されたことが、脊椎動物の初期進化において重要であると考えられてきたが、その起源がホヤと脊椎動物の共通祖先にまでさかのぼることを示した。
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AROMA RESEARCH
巻: 17 ページ: 42-44
Nature
巻: 524 ページ: 462-465
10.1038/nature14657