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2014 年度 実施状況報告書

昆虫における機械感覚器から湿度感覚器への進化に関する神経生物学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 25650119
研究機関福岡大学

研究代表者

横張 文男  福岡大学, 理学部, 教授 (20117287)

研究分担者 渡邉 英博  福岡大学, 理学部, 助教 (90535139)
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード無翅目昆虫 / 原始昆虫 / マダラシミ / 湿度受容 / 温度受容 / 機械受容 / 中大脳触角葉 / 糸球体
研究実績の概要

本研究は、「昆虫のおける機械感覚器から湿度感覚器への進化過程」を調べることを目的としている。
2014年度にはマダラシミが湿度差を検出できるかどうかを解明するための行動実験を行い、通常の飼育をした個体では湿度差が大きいほど低湿度側選択する傾向が強かったが、実験開始前に5~10日絶水させた場合には、絶水期間が長いほど高湿度側を選択する傾向が強まった。
一方、有翅昆虫では湿度・温度感覚子に内包される受容細胞の軸索は中大脳触角葉の特定の糸球体に終末することが既にわかっているので、2013年にはマダラシミの中大脳について抗体染色法を用いて共焦点走査型レーザー顕微鏡観察を行い、その構造解析を行い、マダラシミの中大脳は有翅昆虫の場合とはかなり異なる構造からなり、近縁種のイシノミ同様に触角葉、機械感覚神経叢、腹側中大脳神経叢、Lobus Glomerulatusの4つの領域に分かれていることを明らかにしていた。2014年度にはマダラシミの触角に存在する感覚細胞の順行性染色を行い、その脳内ニューロパイル構造と触角葉糸球体構成を共焦点走査型レーザー顕微鏡(LSM)で観察した。その結果、4つの神経叢のうちLobus Glomerulatus以外の触角葉、機械感覚神経叢、腹側中大脳神経叢には触角からの入力があることが明らかになった。また、触角葉は多数の糸球体から構成され、これらの糸球体群は感覚神経の走行や糸球体の形状により3つのグループに分けられ、後方背側で見られるグループではバナナ状の特異的な形態の糸球体から構成され、他の2つのグループとは大きくことなっていた。この結果、触角葉糸球体群が、触角感覚子から入力されていることが明らかになり、この糸球体群が湿度情報や温度情報の処理に関わっている可能性がより高くなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2013年度の研究により原始昆虫である無翅目のマダラシミの触角には、通常の有翅昆虫に見られる湿度温度感覚子とよく似た形態的特徴のある感覚子があることが走査型電子顕微鏡観察によって確認されていたが、2014年度の行動実験によって、マダラシミが湿度を検出していることを明らかにすることができた。しかも今まで知られている有翅目昆虫とはかなり違う湿度選択行動をすることが明らかになった。
2013年度の研究実績報告でも報告した触角葉のバナナ状の形状の糸球体からなる糸球体群は、2014年度の研究によりこの糸球体群は触角神経からの入力を受けていることが明らかになった。湿度情報処理に関わることが生理学的に同定されている糸球体群との比較から、マダラシミのこの糸球体群が湿度情報処理に関わっていることが強く示唆された。
現在、電気生理学的な実験を始めており、少なくともEAG(触角電図)レベルではその電位変化が湿度強度に依存していることが観察されているので、2015年度中に感覚子からインパルス応答を記録し、触角葉の特定の糸球体に終末することを証明する。

今後の研究の推進方策

現在、電気生理学的な実験を始めており、少なくともEAG(触角電図)レベルではその電位変化が湿度強度に依存していることが観察されている。2015年度中に感覚子からインパルス応答を記録し、触角葉の特定の糸球体に終末することを証明する。2015年度は本科研費による研究計画の最終年度であるので、今までの結果と2015年度の研究結果について有翅目昆虫の場合と比較し、湿度感覚器の進化について考察したい。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (10件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Coarse topographic organization of pheromone-sensitive afferents from different antennal surfaces in the American cockroach.2015

    • 著者名/発表者名
      H Nishino, H Watanabe, I Kamimurac, F Yokoharib, M Mizunami
    • 雑誌名

      Neuroscience Letters

      巻: 595 ページ: 35-40

    • DOI

      10.1016/j.neulet.2015.04.006

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Serotonin-immunoreactive sensory neurons in the antenna of the cockroach Periplaneta americana.2014

    • 著者名/発表者名
      Watanabe H, Shimohigashi M, Yokohari F.
    • 雑誌名

      J Comp Neurol.

      巻: 522 ページ: 414-434

    • DOI

      10.1002/cne.23419

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 膜翅目昆虫の脳構造の特徴とその多様性2015

    • 著者名/発表者名
      原口貴寛、渡邉英博、横張文男
    • 学会等名
      日本応用動物昆虫学会大会
    • 発表場所
      山形市(山形県)
    • 年月日
      2015-03-26 – 2015-03-28
  • [学会発表] 嗅覚投射ニューロンの嗅応答特性と投射パターンの解析2014

    • 著者名/発表者名
      椋本清吾、渡邉英博、横張文男
    • 学会等名
      日本動物学会全国大会
    • 発表場所
      仙台市(宮城県)
    • 年月日
      2014-09-11 – 2014-09-13
  • [学会発表] 原始昆虫マダラシミの脳構造解析2014

    • 著者名/発表者名
      渡邉英博、城戸翔、道久愛美、横張文男
    • 学会等名
      日本動物学会全国大会
    • 発表場所
      仙台市(宮城県)
    • 年月日
      2014-09-11 – 2014-09-13
  • [学会発表] 社会性および非社会性の膜翅目昆虫の脳構造の比較解析2014

    • 著者名/発表者名
      原口貴寛、渡邉英博、横張文男
    • 学会等名
      日本動物学会全国大会
    • 発表場所
      仙台市(宮城県)
    • 年月日
      2014-09-11 – 2014-09-13
  • [学会発表] 社会性昆虫クロオオアリの巣仲間識別に関わる触角感覚子の嗅覚応答2014

    • 著者名/発表者名
      平田圭、渡邉英博、横張文男
    • 学会等名
      日本動物学会全国大会
    • 発表場所
      仙台市(宮城県)
    • 年月日
      2014-09-11 – 2014-09-13
  • [学会発表] オオカマキリ錐状感覚子の嗅感覚細胞の応答2014

    • 著者名/発表者名
      山下貴志、Thomas Carle、山脇兆史、渡邉英博、横張文男
    • 学会等名
      日本動物学会全国大会
    • 発表場所
      仙台市(宮城県)
    • 年月日
      2014-09-11 – 2014-09-13
  • [学会発表] Olfaction and Taste II: Temporal activity patterns of two different types of projection neurons revealed by simultaneous intracellular recordings in the cockroach2014

    • 著者名/発表者名
      Watanabe, H. Nishino H Yokohari F
    • 学会等名
      International Congress of Neuroethology
    • 発表場所
      札幌市(北海道)
    • 年月日
      2014-07-28 – 2014-08-02
  • [学会発表] 社会性昆虫クロオオアリの巣仲間認識に関わる触角感覚子の嗅応答の特徴2014

    • 著者名/発表者名
      平田圭、Thomas Carle、渡邉英博、横張文男
    • 学会等名
      日本動物学会九州支部大会
    • 発表場所
      那覇市(沖縄県)
    • 年月日
      2014-05-24 – 2014-05-25
  • [学会発表] ワモンゴキブリ二次嗅覚ニューロンの匂い刺激応答と形態解析2014

    • 著者名/発表者名
      椋本清吾、渡邉英博、横張文男
    • 学会等名
      日本動物学会九州支部大会
    • 発表場所
      那覇市(沖縄県)
    • 年月日
      2014-05-24 – 2014-05-25
  • [学会発表] 膜翅目類昆虫の脳構造の進化過程の解析2014

    • 著者名/発表者名
      原口貴寛、渡邉英博、横張文男
    • 学会等名
      日本動物学会九州支部大会
    • 発表場所
      那覇市(沖縄県)
    • 年月日
      2014-05-24 – 2014-05-25
  • [備考] 福岡大学研究者情報

    • URL

      http://resweb2.jhk.adm.fukuoka-u.ac.jp/FukuokaUniv/R101J_Action.do

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公開日: 2016-05-27  

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