本研究は、「昆虫における機械感覚器から湿度感覚器への進化過程」を調べるため、原始昆虫である無翅昆虫マダラシミを研究材料に用いた。触角を走査型電子顕微鏡で検索し、有翅昆虫の湿度温度感覚子に酷似した外部形態をもつ感覚子を見つけた。触角の湿度変化に対する電気的応答を測定して得た応答曲線は有翅昆虫の場合と同じだった。触角神経が投射する中大脳を共焦点レーザー顕微鏡で観察したところ、中大脳には4つの領域があり、その1つである触角葉は多数の糸球体から構成され、後方背側の糸球体群はバナナ状の特異的な形態をもち、有翅昆虫の場合との比較からこの糸球体群が湿度情報や温度情報の処理に関わっている可能性が示された。
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