分裂酵母実験株にはTf2というLTR型レトロトランスポゾンがゲノムに13コピー存在する。本研究では、Tf2がコードするインテグラ-ゼタンパク質にGFPを融合した人為改変トランスポゾン遺伝子を1コピー余剰にゲノムに組み込み、そのツールを用いてトランスポゾン分子動態の解析を行った。まずは染色体再編成の融合に伴うTf2転写産物の誘導をGFP融合人工Tf2で確認した。その結果、これまでの結果と同様に、染色体再編成に伴うTf2の2~3倍のmRNA量の上昇はGFP融合型人工Tf2でも検出された。従って、染色体再編成に伴うTf2のmRNA量上昇は、ゲノムに散在するTf2全体が平均的に2~3倍程度mRNA量上昇したためであり、特定のTf2が極端に大きく転写上昇した結果の可能性は極めて低いことが結論づけられた。次に、GFP融合Tf2インテグラ-ゼタンパク質の変動を蛍光顕微鏡を用いて観察した。線状染色体におけるセントロメア破壊を染色体再編成のきっかけとし、その後の細胞でのGFPシグナルを経時観察した結果、セントロメア破壊に伴ってGFPシグナルが核内に蓄積することが判明して。分裂酵母実験株におけるTf2インテグラ-ゼタンパク質は、生来が機能欠損変異型であり、転移反応を起こすことは不可能であるが、染色体再編成に伴って、その直前まで反応は進行している可能性が考えられる。トランスポゾンのRNA分子としての振るまいと合わせ、染色体再編成はトランスポゾン動態と呼応していることが確認された。
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