研究課題/領域番号 |
25650125
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大橋 順 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80301141)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 熱帯熱マラリア / 共進化 / 感染抵抗性 / 自然選択 / 多型間相互作用 |
研究実績の概要 |
本研究は、ヒト(宿主)と熱帯熱マラリア原虫(病原体)を対象に、(1) 熱帯熱マラリア原虫(メロゾイト)のヒト赤血球への侵入、(2) 熱帯熱マラリア原虫感染赤血球(原虫由来赤血球表面抗原)とヒト血管内皮細胞への接着といったマラリア感染の成立・維持の過程において、直接的に作用しあうヒト側分子と原虫側分子をコードする遺伝子を同時解析することにより、ヒトと原虫の遺伝子多型間の相互作用と、各遺伝子の分子進化機構を明らかにし、宿主と病原体の共進化メカニズムの理解を目指す。 平成26年度は、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)EBA175遺伝子のregion IIとregion IIIの領域の塩基配列決定を行った。P. falciparumのEBA175遺伝子は、141アミノ酸からなるF segment(Fsegアリル)と114アミノ酸からなるC segment(Csegアリル)の有無によってアリルを分けた(各EBA175アリルはどちらか一方のsegmentのみを有していた)。次に、両アリルの起源と分子進化について考察した。NCBIデータベースに登録されているチンパンジーマラリア原虫(P. reichenowi)のEBA175遺伝子配列と比較したところ、P. reichenowiのEBA175遺伝子もF segmentとC segmentを保有していることが確認された。P. falciparumとP. reichenowiのFsegアリル間の塩基多様度とCsegアリル間の塩基多様度はほぼ等しく、P. falciparumの両アリルはほぼ同時期に誕生したと考えられた。F segmentとC segmentのそれぞれについて塩基置換速度を計算したところ、同義置換速度と非同義置換速度に統計学上有意な差は検出されず、segment配列自体は正の自然選択の対象にはなっていないと考えられた。 EBA175のレセプターであるヒトのGYPA遺伝子のMN式血液型多型を調べ、Fseg/Cseg多型との相互作用が熱帯熱マラリア感染感受性に与える影響を検討したが、統計学上有意な関連は見いだされなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者の所属機関の変更に伴い、実験室の大規模改修工事が必要とり、その期間遺伝子解析実験を行うことができなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
熱帯熱マラリア原虫のEBA140遺伝子、ヒトのGYPBおよびGYPC遺伝子のコーディング領域の配列決定(少数検体を使用した多型スクリーニング)を行う。マイナーアリル頻度の高い多型が検出されれば、全784検体(熱帯熱マラリア感染患者ゲノムと感染原虫ゲノム)について多型タイピングを行う。検出されたEBA175多型とGYPB多型、EBA140多型とGYPC多型との相互作用解析を行い、感染抵抗性・感受性と関連する組合せを同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年10月、遺伝子配列解析実験を行うに当たり、当初の予測に反し、実験室の床、壁、天井の清潔度が当該実験を行うためには不十分であると判明したことから、実験室の改修工事を行う必要が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費に該当する遺伝子解析用試薬の費用として400000円、その他に該当する論文出版費用として250000円を使用する。
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