研究課題
ゲノムの変異頻度はゲノム領域によって大きく異なっている。ヒトやマウスでは一塩基多型頻度の偏りとしても観察することができる。しかし変異頻度に偏りが生じる原因は明らかでない。分子レベルの突然変異は配偶子が形成される過程で生じたDNA 複製エラーが主な原因で、変異の発生回数は生殖細胞での細胞分裂の回数、すなわちDNA複製の回数に比例すると考えられている。一方S期以外の細胞でもDNA合成反応が起きていることが古くから知られており、このことはゲノム上には局所的にS期の複製回数を上回る頻度でDNA合成が行われる領域が存在することを示している。そのような領域では相対的な変異発生頻度が全ゲノムの平均変異発生頻度より高くなることが予測される。本研究では前述の予測を検証する為に、マウスの生殖細胞を用いて、ヌクレオチドの取り込みを指標にした非S期DNA合成の検出と解析を行った。野生型オスマウスにヌクレオチドのアナログであるBrdUを投与し、6時間後に精巣を摘出し、DNA複製を行っていない精母細胞のみを分離した。精母細胞の核標本を用いた免疫染色の結果では、非S期BrdUシグナルとシナプトネマ複合体との共局在が検出され、パキテン期でのBrdUの取り込みは相同染色体組換え反応に伴うDNA合成である可能性が示唆された。以前より、減数分裂期の相同染色体組換えのホットスポットとその周辺領域の塩基置換頻度には関連があることが知られており、今回の実験結果はその知見とも矛盾しない。今後はFACSを用いて精母細胞を分離した上で、免疫沈降法により非S期DNA合成領域を物理的に分離し、ゲノム解析を行う。
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