研究実績の概要 |
ロドコッカス属細菌において同種でありながら株レベルで異なる抗生物質を生産する数株を得ている。これらの系統学的分類と抗生物質生産性による分類を関連づけるため、それぞれ異なる物質生産性を示すRhodococcus erythropolis 4株の完全ゲノムを決定した。これによりこれまで分類の指標の候補としていたgyrB(DNAジャイレースサブユニットB)や rpoB(RNAポリメラーゼβサブユニット)だけでなく、16S rRNA遺伝子の完全長やコピー数を明らかにする事が出来た。更にそれぞれの抗生物質の生産系遺伝子を明らかにする事が出来た。これらの情報から、これまでに得ていたものよりも更に詳細に進化系統関係と抗生物質生産性について解析を進める事が出来た。更にrecA (DNA recombinase), trpB(tryptophan synthase beta), atpD (ATP synthase beta), を合わせた5遺伝子によるMLST解析を行った。結果としてはgyrBとrpoBはほぼ同じ解像度を持ち、MLSTと同等の解像度が1遺伝子で達成されるというものであった。またR. erythropolis種内(21株)のgyrB 1000塩基あたりの変異率は5.8であり、Pseudomonas putidaの103、Bacillus cereusの77.9と比べ極めて低く、R. erythropolisの各株が極めて進化的に近縁でありながら、機能的な多様性を持つ事が示された。ロドコッカスについてはこれらの情報を元に分類またデータベース化が可能であった。しかし抗生物質生産菌として知られるストレプトマイセスについては同一の株において複数の抗生物質生産をする株が極めて多く、また培地条件などにより生産物が異なる事から、同様の手法による分類とデータベース化は困難であると結論付けた。
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