研究実績の概要 |
本研究では、実質的にゲノムスキャンのリファレンスとして利用できる基盤塩基配列データを、次世代シーケンサーを利用した花粉一粒DNA分析による高密度連鎖地図として迅速に構築する方法の基礎技術を開発した。まず、マツ属花粉を用いて、花粉一粒DNAの全ゲノム増幅法の基礎技術開発を行った。これにより、花粉一粒から直接PCRを行えない場合でも、次世代シーケンサーで解析するためのDNA試料が得られるという道を開いた。次に、パーソナル次世代シーケンサーによって通常のゲノムDNA試料から網羅的に塩基配列を得る新手法を開発し、この手法を花粉DNAの解析に応用した。この方法を用いて、ゲノムサイズが最も大きい仲間の一つと考えられている非モデル植物のユリ科植物を対象として、その連鎖解析の基盤となる、交配家系を用いたゲノム情報の取得を行った。なお、この解析では、花粉一粒DNAの全ゲノム増幅法は用いず、花粉一粒から直接PCRによって複数領域を増幅する方法を用いた。具体的には、ハマカンゾウとキスゲを交雑させたF1個体の葯から花粉58粒を単離して、DNAを抽出した後、特殊なマルチプレックスPCRによってゲノム内の多数の領域を同時増幅し、パーソナル次世代シーケンサーによる網羅的塩基配列分析を行った。その結果、全体で1,938万リードを得た。そのうち15粒 (25%)以上で共通して得られた248 SNP座を対象として、アリル分離比をカイ2乗検定したところ、226座 (91%)でメンデル遺伝として期待される1 : 1に分離した。以上の予備的試験により、新手法による非モデル植物の基盤塩基配列データ迅速構築法の基礎が開発できたと言える。
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