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2014 年度 実施状況報告書

スパイラルメトリクスのin situ計測に基づく大規模河川の栄養塩代謝機能の評価

研究課題

研究課題/領域番号 25650141
研究機関山梨大学

研究代表者

岩田 智也  山梨大学, 総合研究部, 准教授 (50362075)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワードスパイラルメトリクス / 大河川 / 栄養塩 / ドリフト法 / トレーサー
研究実績の概要

本研究は大河川における窒素・リンのスパイラルメトリクス(取込み速度U、鉛直移動速度vf、流下距離Sw)を直接計測し、これまで測定が困難であった大規模河川における栄養塩代謝速度を推定することを目的としている。
河川水と比重を等しくした追跡子(初年度に開発)を河川に投入し追跡するドリフト法を試みたところ、川幅全体に広がって流下する追跡子を視認し続けることが困難であることが判明した。そこで、河川表面を流下する浮子を採用し、表面流速と水柱流速の関係を明らかにするためのトレーサー実験を9河川で改めて実施した。その結果、表面流速と水柱流速の比は河川サイズに関わらず一定(1.49)であることが明らかとなった。そこで、この関係式を用いて、流量20~47m3/sの富士川本流で水塊の追跡を行った。
水塊を追跡しながら富士川本流のスパイラルメトリクスを推定したところ、NH4とPO4の除去速度Uが高いことが明らかとなった。しかし、NO3については取込み速度Uが一貫して負の値(河床から水柱へのフラックス)を示すことも明らかとなった。また、NO3の取込み速度Uは流速の遅い場所ほど早い傾向がみられた。淵やワンドなどの局所的な停滞水域に嫌気環境が発達し、脱窒によるNO3除去のホットススポットとなっている可能性がある。一方、NH4やPO4の取込み速度Uは、流速の早い瀬で上昇することも明らかとなった。
今年度の研究により、富士川本流のNH4とPO4の取込み速度は小中河川より高いことが明らかとなった。また、高解像度にスパイラルメトリクスの空間パターンをとらえることで、流速の遅い局所環境における高いNO3 除去効率を明らかにすることができた。河床の均一化や流路の単調化をもたらす河川改修は、大河川における栄養塩取り込みの局所的なホットスポットを喪失させる可能性があると考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度は、初年度の遅れを大幅に取り戻し、ほぼ研究当初に想定していた成果を得ることが出来た。とくに、水柱流速と表面流速の比がほぼ一定であり、大河川でもドリフト法が適用可能であること、それによって、これまで計測されたことのない流量40m3/sクラスの大河川における栄養塩代謝機能が定量化できることが明らかとなった。また、実際に富士川本流で測定を行ったところ、先行研究で予想されていた以上に大河川のNH4とPO4の除去速度Uが高いことや、流速の遅い淵や蛇行部などの局所環境における高いNO3除去効率などを明らかにすることができた。これらは、当初予定していたものを上回る成果である。一方で、富士川本流の調査期間が9月-10月に集中したことから、データのばらつきが小さく、得られたデータをもとにした栄養塩代謝モデルを構築することはできなかった。この点については次年度に調査計画を改善し、取り組んでいく予定である。

今後の研究の推進方策

次年度には、これまでに完成させてきたドリフト法を用いながら富士川本流のスパイラルメトリクスの季節変化を明らかにする。とくに、4月から11月までの成長期に集中的に本流調査を行い、NH4、NO3、PO4の代謝速度を推定する。得られたデータは春-夏-秋の期間を含むことから、環境データおよび栄養塩代謝速度ともに大きな季節変化がみられるものと期待している。このデータをもとに、生物の代謝反応と溶質の移流拡散を考慮した非線形統計モデルを構築し、大河川の栄養塩代謝機能を定式化する。これによって、大河川の栄養塩輸送に関わる物理化学要因および生物要因の相対的な重要性を評価する予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2015 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 水系ネットワークのリン輸送動態2015

    • 著者名/発表者名
      岩田智也・青山隼人
    • 雑誌名

      地球環境

      巻: 20 ページ: 27-34

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] スパイラルメトリクスのin situ計測に基づく大規模河川の栄養塩代謝機能の評価2015

    • 著者名/発表者名
      小林勇太・岩田智也
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2015年大会
    • 発表場所
      幕張メッセ(千葉県千葉市)
    • 年月日
      2015-05-27 – 2015-05-27
  • [学会発表] スパイラルメトリクスのin situ計測に基づく大規模河川の栄養塩代謝機能の評価2015

    • 著者名/発表者名
      小林勇太・岩田智也
    • 学会等名
      第62回日本生態学会大会
    • 発表場所
      鹿児島大学(鹿児島県鹿児島市)
    • 年月日
      2015-03-21 – 2015-03-21
  • [備考] 研究室ホームページ

    • URL

      http://www.js.yamanashi.ac.jp/~iwata/

URL: 

公開日: 2016-05-27  

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