研究課題/領域番号 |
25650144
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
佐藤 拓哉 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30456743)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 寄生者群集 / 安定性 / ハリガネムシ / 鉤頭虫 / 異形吸虫 / 間接効果 |
研究概要 |
研究計画に則り、寄生者が宿主の行動操作を介して食物網内の捕食-被食関係を改変していることを報告する事例研究を網羅的に収集した。これをもとに、行動改変をする寄生者が、栄養段階やリンク密度といった観点で食物網内のどのような位置によく組み込まれているかを評価した。また、行動操作型の寄生者の在・不在下での捕食-被食関係を定量的に評価している論文を収集・データの標準化をして、その効果を量的に評価した。今後はこのデータに基づき、(1)行動操作の強い影響が検出されている寄生者や宿主の分類群の特徴、(2)行動操作による食物網内のエネルギー流の時間変動といった点をさらに検証する予定である。これにより、寄生者が宿主の行動操作を通して食物網に与える影響の一般性を議論する論文を執筆する。 寄生者群集と水域群集の安定性との関係に関するメソコスム実験については、ハリガネムシ類と異形吸虫類(後者は当初計画では鉤頭虫であったが、飼育実験が予想以上に困難であったために分類群を変更した)がそれぞれ、陸域宿主(カマドウマ・キリギリス類)と水域宿主(カワニナ類)を操作することで、いずれも最終的に上位捕食者へのエネルギー流を促進し、捕食者のバイオマスを高く保つことで、群集を不安定にするかもしれないという仮説を検証するべく、メソコスム実験を実施している。近年、特定の寄生者-宿主関係が群集や生態系機能に影響する事例が様々な生態系から報告されているが、実際の食物網には極めて多様な寄生者が組み込まれていることも周知の事実となり始めている。本事業を重要なステップとして、今後、「寄生者群集」が生態系において果たす役割を実証して理論的に位置づけることが望まれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
寄生者による宿主の行動操作が捕食者-被食者関係を改変する効果についてのメタ解析については、論文収集をおおむね終了し、データ抽出・解析をおおむね終えている。また、複数の行動改変型寄生者がtop-downとbottom-up効果の改変を通して水域生物群集の安定性に与える影響については、天候不良による野外実験計画の一部変更や対象とする分類群の変更等を余技なくされたものの、当初の研究目標に沿って問題なく進められている。
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今後の研究の推進方策 |
寄生者による宿主の行動操作が捕食者-被食者関係を改変する効果については、前年度に取りまとめたデータに基づき、メタ解析を実施して、その効果に関する論文を執筆する。寄生者群集と水域生物群集の安定性に関する野外実験については、長期データを収集する目的で、実験のメンテナンスと時系列のサンプリングを計画している。これらのデータを早期に取りまとめることで、研究成果を国内外の学会で発表する予定である。 また、事業最終年度であることから、社会一般に研究成果を積極的に伝えるべく、アウトリーチ活動も計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度においては、前倒し請求時期までに悪天候による実験設備の補修・メンテナンス費用が必要になったため、余裕をもって前倒し請求をした。しかしその後、天候不良による同様の支出が軽微に抑えられたため、次年度以降に繰り越すこととした。 年次計画に則り、メソコスム実験の継続に関するメンテナンス・研究補助者謝金の費用として支出する、および時系列に収集されるサンプルの分析費用に使用する計画である。
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