研究課題
挑戦的萌芽研究
水域研究に関しては、琵琶湖における粒状有機物の分解過程について研究を行った。海洋や大型湖沼おいては、粒子状有機物の窒素安定同位体比が、表層から深層にかけて深度とともに上昇するという現象が知られている。琵琶湖で採取した湖沼有機物の分解実験を行ったところ、実験中の各種アミノ酸濃度の変化は、ほとんどの場合全窒素と同様の傾向を示した。各種アミノ酸の窒素安定同位体比は、総じては全窒素安定同位体比と同様の変化を示した。しかし、一部の実験では、ほとんどのアミノ酸の同位体比が全窒素と同様に実験開始初期から増加したのに対して、グリシンとセリンは28日目までは大きな変化は見られなかった。懸濁物を採取した季節や深度によって、分解に伴う全窒素安定同位体比の変動パターンは異なっており、また各種アミノ酸の同位体比の変動パターンも異なることがあった。微生物分解過程における窒素同位体比の変動機構を明らかにする上では、有機物の性質や環境、微生物の懸濁物への寄与率なども含めて、より詳細に検討する必要があると考えられる。陸域研究に関しては、アフリカ及びアジア熱帯の森林及び草原で採取された、食性の異なるシロアリとミミズを測定した。その結果、バルク窒素同位体比の大きく異なる分解初期利用種と分解後期利用種でアミノ酸間の窒素同位体比の差はほとんどなかった。これは、腐植食性の土壌動物に特有のパターンかもしれない。また、キノコと共生するキノコシロアリについて測定したところ、餌となる植物リターからキノコへの変換パターンは、グルタミン酸の窒素同位体比の上昇を伴わないものであった。いずれにせよ、陸域分解系における土壌動物の資源利用解析に新たな可能性を示すものであった。今後は分解パターンとアミノ酸同位体比の挙動を研究する必要があると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
微生物の介在する系では通常のアミノ酸同位体比の変化とは異なった挙動を示すという仮説が証明されつつあり、次年度にとりまとめを行う予定である。
アミノ酸同位体比の分析条件の再検討を行っており、より効率的な分析方法を開発し、研究を進展させたい。
アミノ酸同位体比分析に関する消耗品は、分析前処理過程の数や方法によって変動するため。アミノ酸同位体比分析に関する消耗品に充当予定
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Oecologia
巻: in press ページ: in press
10.1007/s00442-014-2936-4
巻: 171 ページ: 935-944
10.1007/s00442-012-2446-1