研究課題
白色腐朽菌を含む腐食連鎖(木材-白色腐朽菌-菌食昆虫)に関して、アミノ酸窒素安定同位体解析による栄養段階上の位置(Trophic Posision:TP)の推定を行うために、生物間の関係が明らかな、野外で採集した木材(コナラQuercus serrate、アベマキQuercus variabilis)、白色腐朽菌(クジラタケTrametes orientalis)および菌食昆虫(ルリオオキノコAulacochilus sibiricus)のアミノ酸窒素安定同位体比を測定した。アミノ酸窒素安定同位体比によって求めたTPの結果(Chikaraishi et al. 2009によりグルタミン酸とフェニルアラニンの窒素同位体比より計算されたTP:TP<Glu/Phe>=(δ15N<Glu>‐δ15N<Phe> + 8.4)/7.6+1)は、生木について0.5と低い値をとり、生木からクジラタケにかけてTPが約2.0上昇した。一方、クジラタケからルリオオキノコにかけてはTPが約0.6しか上昇しなかった。各アミノ酸別に示すと、木材-クジラタケ-ルリオオキノコの順にフェニルアラニンの窒素安定同位体比が減少し、グルタミン酸の窒素安定同位体比に関しても上昇量が低いという、Chikaraishi et al.(2009,2011)の結果と異なった、今までに報告例のない特異な変動パターンが得られた。しかし一方で、アミノ酸窒素安定同位体比から推定したTPの種内のばらつきはとても小さく、腐食連鎖においてもアミノ酸窒素安定同位体解析によるTP推定を行える可能性が示される結果となった。これらより、アミノ酸窒素安定同位体解析によって、微生物の介する代謝系では特異なパターンを示すことが明らかになり、生食連鎖のみを想定した栄養段階上位置(TP)の計算では、腐食連鎖も含めたTPの見積もりに関してはさらなる検討の必要があることが示された。
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Oecologia
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