研究課題/領域番号 |
25650148
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
鈴木 孝仁 奈良女子大学, 古代学学術研究センター, 特任教授 (60144135)
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研究分担者 |
木内 正人 独立行政法人産業技術総合研究所, ユビキタスエネルギー部門, 主任研究員 (50356862)
竹内 孝江 奈良女子大学, 自然科学系, 准教授 (80201606)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | カビ / 揮発性有機化合物 / Aspergillus fumigatus / Fusarium solani / 菌密度効果 / 他感作用 |
研究概要 |
土壌由来のカビを中心とした生態系では、揮発性有機化合物を介したカビ相互の信号のやりとりによって、生態系が営まれている可能性が示唆される。そこで当該研究では、シャーレ内空間でのカビの生態系を用いて、カビ由来の揮発性有機化合物(MVOC)がカビ生育の諸相でコミュニケーションにどう関わっているかを明らかにすることにある。 Aspergillus fumigatus とFusarium solaniを実験材料に用いた。それぞれのカビ種が集落形成の時間経過と共に分泌するMVOCをガスクロマトグラフ・質量分析計で同定した。また大型の同一シャーレ内で、複数の小型シャーレ上で異なる時間経過で生育された同種のカビの生育を比較した。その結果、十分に生育したカビ集落は、後から移植されたカビの生育を気相を介して抑制する現象、いわゆる菌密度効果がはたらいていることを支持するデータが得られた。 A. fumigatusでは、菌糸の伸長成長の時期に分泌されるベンズアルデヒドとヘプタナールが、後から移植されたカビ培養の菌糸伸長と胞子の発芽を抑制した。F. solaniでは菌糸の伸長成長の時期の集落が、後から移植されたカビ培養の菌糸伸長を抑制し、2-エチル-1-ヘキサノール、3-オクタノールおよびヘプタナールがその抑制因子としてはたらき、またエプタナールが胞子の発芽を抑制した一方で、3-オクタノールは逆に胞子の発芽を促進することが判明した。それぞれの菌種を大型の同一シャーレ内で気相のみを介した共培養を行ったところ、F. solaniの集落がA. fumigatusの集落形成を抑制することが判明した。この他感作用(アレロパシー)を担うMVOCは、F. solaniから分泌されるベンズアルデヒドであることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画・方法で記した(1)他感作用の判定実験、 (2) 気相を介したステージ特異的なシグナル伝達物質を調べる実験、(3) 気相を介した菌密度効果(クオラム・センシング)に関わる物質を調べる実験の3項目については順調に結果が得られている。 もう1つの項目である(4)生理作用に関わるMVOCsのタンパク質合成への影響をモデル生物Aspergillus nidulansで調べる実験については、現在その準備に取り掛かっている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度には、細胞のタンパク質をAmersham Bioscience社から市販されている蛍光標識試薬CyDye DIGE Fluors, Minimal Labelling Dyesを用いて標識し、2次元電気泳動によるタンパク種の分離、マトリックス支援レーザ脱離イオン化法を組み合わせた飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF)の機器を利用したストレス応答タンパク質の同定へと進めることを予定している。カビ菌体を通常の機械的な粉砕の方法で処理しただけでは細胞を十分に破壊することが困難であることが判明した。その打開策として液体窒素を用いた凍結融解を行う予定である。 カビの細胞からタンパク質を効率的に抽出する方法の開発に成功するかどうかが研究進展のための鍵となっている。
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