変態という大きな体制変化を個体の生涯のうちに経験する生物における、体制変化の前と後での、個体の個性の関係を主としてトンボ類で検討した。データの記録はおもに動画の撮影により行なった。同様の記録と解析を体制の変化が小さいバッタ類とアメンボ類についても行なった。トンボ類の動画データの解析に基づいて、幼虫と成虫の活動性等を比較した。シオカラトンボでは、成虫の活動性には個体間の差が見られたが、幼虫期の活動性については統計的に有意な個体間の変異が検出されなかった。幼虫期の活動性を測定する際の環境条件の設定を検討する必要があると思われる。また、成虫の活動性および捕食者のモデルを接近させたときの行動を比較したところ、後者の条件での活発さと一般的な活動性の間には有意な相関が見られなかった。一方、アオモンイトトンボでは、成虫と幼虫での活動性のあいだに正の相関があった。環境条件の異なる個体群間でも活動性のちがいを検討した。動画記録により得られたデータから、活動性などに加えて活動量の時間的な安定性等についても解析した。相対的に安定したコンスタントな活動性を示すかどうかは、個体の活動性における成虫・幼虫それぞれの時期の中での時間的な相関も考慮しつつ、個体の個性の新たな面として検討をする必要がある。あわせて、個体の個性のデータの解析法を検討した。個体の直前の状態の影響をも受けることが多いため、時系列データの解析に似た分析が必要であることが示唆された。
|