研究課題/領域番号 |
25650152
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
古賀 章彦 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (80192574)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 染色体 / 反復配列 / ヘテロクロマチン / 霊長類 / 進化 / ゲノム |
研究概要 |
ヨザル科は、染色体の開裂や融合が、霊長類の他のグループより高い頻度で起こっており、近縁の種の間でも染色体構成に大きな違いがある。すなわち、染色体構成に急速な変化がみられる。ヨザル科の染色体にはもうひとつ特徴がある。多くの染色体でヘテロクロマチンの大量の蓄積がみられる点である。この2つの特徴の因果関係を追求することが、本研究の目的である。平成25年度は、2年の研究期間のうちの1年目で、ヘテロクロマチンの実態の解明と、増幅の過程の推測を行った。 このヘテロクロマチンは、研究代表者が研究開始前にすでにクローンとして得ており、OwlRep と名付けていた。まず OwlRep の染色体上の詳細な場所と規模を調べ、アクロセントリック染色体の短腕の全域に大規模に存在すること、およびメタセントリック染色体のセントロメア領域にも少量存在することを見出した。続いて塩基配列の詳しい解析を行い、内部に複雑な構造をもつことを発見した。ステム・ループを形成し得るブロックが延々と連なっている状態である。この複雑な構造は、DNA複製に際して OwlRep が切れやすいものであることを示唆する。この2つの特徴に基づき、OwlRep の増幅の過程を推測した。OwlRep はセントロメア領域の構成成分とみなされて染色体から他の染色体に伝播し、続いてテロメア領域の構成成分とみなされて増幅したという推測である。以上の結果および解釈を、論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
対象としている OwlRep は、真確生物では他に例をみないほどの複雑な構造をしており、この反復配列が染色体構成の急速な変化の原因であるとの推測は、確度は高いと考えられる。この研究課題で設定した仮説が最終的に明瞭に証明できるとの見通しが立った。
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今後の研究の推進方策 |
これまでは、分子レベルおよび細胞レベルでの観察が主体であった。2年目は、細胞へのDNA導入などの人的な操作を施す実験を追加し、仮説の証明の補強とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品費をより効率よく使用することで、消耗品費に小額の余剰が生じた。 研究の効率を高めてより大きな成果を目指すための費用として、次年度に使用する。
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