中枢神経系活動の指標としては、室内実験において近赤外分光法(NIRS)がよく用いられるが、フィールド実験における使用法は確立していない。 平成25年度においては、男性20代被験者を対象として実施し、総ヘモグロビン濃度においては、12名すべての被験者において、森林部の方が都市部に比較して低周波帯域(0.03Hz以下)のパワー値が低く、高周波については差異がないことを認め、0.03Hz以下の低周波帯域が環境変化に反応することがわかった。平成26年度においては、20代女性被験者を対象とした野外夏期炎天下における高照度条件下での計測を行った。被験者は36名とし、15分間の歩行および座観を行い、述べ144回の計測を実施したところ、男性被験者に比べて、女性被験者の方が測定できないケースが多いことが分かった。平成27年度においては、19名の20代女性被験者において森林セラピー時の前頭前野活動計測を行ったところ、被験者のパーソナリティによって、その変化が異なることがわかった。穏やかな性格であるタイプB群被験者においては、前頭前野活動が鎮静化し、激しい性格のタイプA群被験者においては、活動が亢進した。本知見は多くの科学分野で課題となっている個人差研究の解明にも寄与すると思われる。 平成28年度においては、一般的に計測が困難である高齢者リハビリ患者14名(平均78.6歳、女性10名82.8歳、男性4名68.0歳)の前頭前野活動を計測した。ヒノキ盆栽の60秒間の視覚刺激によって、ヒノキ盆栽なしに比べ、左前頭前野において、継続した活動の低下が観察された。ヒノキ盆栽の視覚刺激は高齢者の左前頭前野を鎮静化することが明らかとなり、自然由来の刺激を受けた20代成人の結果と一致した。
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